「お母さんは、麗紀が死ぬなんて思ってない。麗紀がお母さんやお父さん、美歌ちゃんから離れるなんて、思ってないわ。それに……麗紀は親不幸者なんかじゃない」
お母さんは、あたしを抱き寄せた。
そして、ポン、ポン、と背中を叩く。
まるで、小さな子供をあやすかのように。
「……辛かったわね、麗紀」
少し鼻にかかった、お母さんの声。
ねぇ、お母さん。
そんなこと、言わないで。
やっと、やっと自分に絶望できたのに。
本当に、あたしは死ぬんだって。
あたしはこの世界から消えるんだって。
お母さん達と離れるんだって。
そう思えたのに。
あたしが悩んで、苦しんで出した『あたしから、みんなを切り離す』って言う答えは、
いとも簡単に、お母さんの言葉で脆く崩れてしまう。
……それでも、崩しちゃいけない。
崩したら、死ぬのが怖くなる。
美歌の笑顔を、思い出してしまうから。