その跡を見るたびに、あたしは胸がえぐられるような感覚を覚える。
……所々に、涙の跡がある。
あたしはその涙の跡を優しく撫でた。
お母さんは、泣きながら、この本を呼んでいたんだ…。
泣きながら、あたしが助かる方法がないかと、探していたんだ。
――でも、もうその方法はない。
「ただいまー」
そのとき、いつもの優しい声が家の中に響いた。
そして、リビングの扉がゆっくり開かれる。
「……え…麗、紀…?」
バサッと、ビニールが落ちる音が聞こえる。
振り向くと、青ざめたお母さんがいた。
「ど…どうして……?」
お母さんの目線は、あたしの顔ではなく、
あたしが持っている本を指していた。



