「…ただいま……」
シーン…。
お母さん、いないのかな。
あたしは、足音を立てずにリビングに行く。
「……出かけたんだ」
リビングに、お母さんはいなくて、バッグもない。
あたしはドカッとソファに座った。
そのとき、テーブルに置いてある物が視界に入った。
「…これ……」
あたしはそれに手を伸ばす。
それは、表紙に『頭蓋内亢進』と書かれた分厚い本。
これは、あたしの病気の名前だ。
その病気に関する本が5冊、テーブルに置かれていた。
あたしは震える手で、その本をパラパラとめくる。
マーカーでチェックされていたり、付箋を貼られていたり、メモを書かれていたり…。
何度も何度も、読まれている跡があった。



