「…ごめん……、ドジっちゃって……」
へへっ、とワザとらしく笑う。
「……ねぇ、麗紀…」
低い声に、思わず息を飲む。
美歌は、背中を摩っていたあたしの手に、自分の手を添えた。
温かい美歌の手。
それでも、なぜか心では、とても冷たく感じるんだ。
「……本当のことを…、言って」
キュっと、美歌はあたしの手を握る。
やめて、美歌。
そんな温かい手で、そんな冷たい手で触れられたら、
あたしは、また美歌にウソをつかなきゃいけないでしょう?
「本当のことって、なに?」
あたしは美歌の手から逃げるように立ち上がった。
悲しげな美歌の瞳が、視界の隅に入った。
お願い美歌。そんな、泣きそうな顔、しないで。