車に乗って、シートベルトをしめた。
会話がないのが嫌だったから、音楽の音量をいつもより上げた。
そのまま、会話がなく、あたしとお母さんは待合室のイスに座った。
はぁ、と息を吐く。
少し汗ばんでいた手をコートに拭った。
『―栗田さーん。栗田 麗紀さーん』
名前を呼ばれ、ふたり同時に立ち上がった。
診察室の扉を開けて、いつものように先生の前に置かれたイスに座った。
お母さんは、あたしの後ろに立った。
「………麗紀さん。大丈夫ですか?」
心配そうに訪ねてきた先生。
あたしは、少し低い声で「はい」とだけ答えた。
お母さんの手があたしの肩に置かれた。
少し、震えてる…。



