それでも緒川くんは「ありがとう」と、優しく笑った。
「なんか、栗田にそう言ってもらえて、スッキリした。俺、今の話、誰にも言えなくてさ。でも、栗田に聞いてもらえて良かった」
ニカっと笑った緒川くんに、あたしは曖昧に笑った。
彼はあたしに悩みを打ち明けてくれたのに、あたしは彼にウソをついてる。
あたしなんかが、聞いて良かった話だったんだろうか。
「お前も、悩みとか言えよ。あ、でも、俺に言う前に岡田に言うか」
…美歌……、にも言えないんだけど。
「……あたしの悩み…は、きっと、いつか分かるかな」
「え…?」
あたしの言葉に、意味が分からないという表情をした緒川くん。
「じゃあ、あたし、行くね。また明日」
「…あ、…また、明日…」
不思議そうにあたしを見る緒川くんを置いて、病院の中へと戻った。
待合室に行って、イスに座ったとき、ちょうど名前を呼ばれた。
診察室に入ると、先生がいた。
あたしは先生の前に置かれたイスに座る。



