でも、本当に気がつかなかった。
“緒川”なんて名字の人なっていっぱいいるし、それに、緒川くんに妹がいたなんて知らなかったし……。
「……最悪」
片手で顔を覆った丁度その時、エレベーターの扉が開いた。
エレベーターを出て、時計を見る。
…あと、15分か。
はぁ、とため息を吐いた。
あと15分も、こんな空気の悪い場所には居たくない。
そう思ったあたしは、中庭へと向かった。
この前座っていた同じベンチに、また座った。
「……まずいでしょ……」
そう小さく呟き、両手で頭を抱えた。
目を閉じて、さっきの光景を思い出す。
あたしは、この水色のラインが入った病衣を着ていて。
優香ちゃんのお兄ちゃんは、緒川くんで。



