「おい!栗田!!」「お姉ちゃん!?」
そんなふたりの声を背中で聞きながら、エレベーターに飛び乗った。
ボタンを押す手が震えるけど、今はそんなこと気にしてられない。
あたしは、ボタンが壊れるんじゃないかというぐらいボタンを連打した。
こんなに押したって、扉が閉まるのが早まるわけじゃない。
けど、ただあたしは焦っていて。
「――栗田!」
扉が閉まる瞬間、そんな声が聞こえたけど、あたしは無視して扉がしまったことを確認した。
「……はぁっ」
壁に背を預けて、エレベーターの天井を見上げる。
どうして、気づかなかったんだ。
今思えば、たくさんサインはあった。
優香ちゃんの名字は“緒川”だってことも。
お兄ちゃんと、お姉ちゃんがいるってことも。
……名前を聞いた時点で、気づけよあたし…。



