人生の中で、一番泣いた。
「……引退、しちゃったねー」
帰り道、美歌がすごい鼻声で言った。
「しちゃったねぇ…。でも、良かった。みんなで笑えて」
「うん…。今度さ、音楽室でパーティーしようだって。ジュースとかは山ちゃんのおごりで」
「また山ちゃんにおごらせるんかい。」
そう言うと美歌は笑った。
「ただいまー」
「あ、麗紀!おかえりー!!」
いつにもまして、お母さんの声が元気だ。
リビングに行くと、既に夕食が用意されていた。
「あれ、お父さんは?」
あたしがそう言うと、お母さんは微笑んだ。
「ケーキ買いに行ったのよ。お祝いにね」



