今までで一番いい演奏だった。
そう思えたら、どれだけ幸せだろう。
曲が終わり、あたし達は観客に礼をした。
盛大な拍手が、あたしの涙腺を刺激する。
まだ、まだ泣くのは早い。
楽器を気にしながら、舞台袖に移動した。
その瞬間、張り詰めていた糸が緩んでしまったかのように、全身の力が抜けた。
フラフラの足で、楽器を片付けにここの会場の広場に出た。
急な開放感で、深くため息をついた。
肺に溜まっていた空気を全て吐き出すような長いため息。
そんなため息を、隣にいた美歌もやっていた。
「ふふっ、カブったね。麗紀」
そう言った美歌の目には、少し涙が溜まっていた。



