「…簡単かぁ~」
あたしは不器用だ。
だから、自分で髪なんて結べないし、人の髪だって結べない。
「…今日は、麗紀なんだか機嫌がいいね」
「なにそれ。あたし、毎日機嫌悪いみたいな?」
「ううん。なんだか、元気」
そう言って、美歌は笑った。
…うん。あたしは今日機嫌がいいよ。
病院で小さなお友達が出来たし、それに、自分の気持ちを静かに終わらせることが出来たから。
……あの感情は、恋だったのかは分からない。
ただ、迷ったり、弱ったりしたときに丁度、彼が現れて、少し彼に依存しそうになっていただけかもしれない。
でも、どっちにしろ、あたしは彼から離れなきゃいけなかったんだ。
教室に入り、席に座る。
そのとき、「あ、そうだ」と美歌が話しかけてきた。
「なに、どうしたの?」
「大会の日、髪結べだって」
「えぇー。……美歌さん、お願いします」
「ふふ、りょーかーい!!」



