名前を呼ばれ、振り返ると、彼は安心したように微笑んだ。
「…おはよう、栗田」
「はは、もうお昼回ったけどね」
彼は「そうだった」と言って、空を見上げた。
「今日は飛んでねぇなぁ、鳥」
その言葉を聞いて、またあたしは顔を上げた。
ゆっくりと、流れて、雲が形を変えていく。
「あ、そうだ。タオル、返さなきゃ」
独り言のようにつぶやいて、あたしは鞄からタオルを出した。
「はい、これ…。昨日は、ありがとう」
そう言って、あたしは彼にタオルを渡した。
「お、ありがとな。」
あたしからタオルを受け取って、彼は笑った。
「………あたし、もう、あんなことしないから。ちゃんと生きていく」
緒川くんは少し驚いたような顔して、でも、また微笑む。
「…なんかあったら、メールでも電話でもいいから、俺に言えよ」
「はは、…気が向いたらね」



