………大丈夫。覚悟は、してた。
その気持ちとは逆にあたしはスカートの裾を握り締めた。
…覚悟は、してたけど…、“期待”もしてしまったんだ。
“腫瘍は、小さくなっている”という、期待を。
でも、現実は、そんなに甘くない。
「…でも、腫瘍は少し大きくなっていますが、予想していた大きさよりは、全然小さいです。予想していたスピードより、全然遅いんです」
「…そ、そうなんですか…?」
そう言ったのは、お母さん。
その声は、微かに震えている。
「はい。だから、これからも薬をちゃんと飲んで、病院も頻繁に通うようにしてください」
「…分かりました。」
なんだかあたしはボーっとしていて、小さな声で返事をしてしまった。
「じゃあ、お母さん。少し説明したいことがあるので、ちょっといいですか」
「あ、…はい。じゃあ、麗紀。ちょっと外で待っててくれる?」
「…分かった」
そう言ってあたしは、先生に礼をして、診察室を出た。



