あたしが教務室に入って、担任のもとに向かうと、また違う部屋に案内された。
〈会議室〉
こんな部屋に入るのは、始めてだ。
濃い茶色のソファががたくさん置かれてあり、なんがか堅苦しい雰囲気だ。
「…栗田」
いつも、強気な担任の声が、今はなんだか悲しげに聞こえる。
「はい」
あたしはその担任の声とは真逆に、強気な声で返事をした。
「その…親御さんから、話は聞いた」
「そうですか」
まるで感情がないような声で答えたあたしを、担任は少し驚いたような顔で見た。
「…あたしは、残りの命を精一杯生きます。…決めたんです。もう、ウジウジしないって」
担任は、なにも言わず、あたしの話を聞いてくれた。
「半年後、あたしが生きているかは分からないけど、そんな分からない先のことは考えないで、“今”を生きようって決めたんです。」
途中、声が震えそうになったが、なんとか耐えた。
ここで、そんな弱気な声を出してしまったら、今あたしが言った言葉が嘘になってしまう気がしたから。
「…お前は、強いな」
担任は、最初の弱気な声とは違う、優しい声で言った。
あたしは少し微笑みながら、担任に頭を下げ、会議室を後にした。