…まったく、なんで借りてしまったんだろうか。
でも、もう借りてしまったものは仕方ない…。
「…ふう」
あたしは小さくため息をついて、トイレの扉を開けた。
教室に入ると、さっき廊下にいた人だかりは教室の中に移動していた。
でも、その中心にいるべき人物が、いない…。
緒川くん、どこに行ったんだろう……って、
だめだめ!
気にしないって決めたじゃん、あたし。
あたしは頭をかきながら、自分の席に向かった。
「あ、麗紀!おかえりー」
ケータイをいじっていた美歌が顔をあげて言った。
「ただいまー」
あたしは鞄を机にかけ、席に座った。
あたしの席は窓側だ。
いつものように、体を横にして美歌の机の上に右肘を置いた。
そして、そういう体の体勢をとると、丁度その人の塊が目の前にある。



