「もしもし、お母さん?」
『あ、麗紀…。驚いたわよ。あなた、すごい早い時間に家出たのね』
電話ごしに、ため息混じりのお母さんの声が聞こえた。
「うん。なんかすごい早く目が覚めたから…」
『まぁ、早起きは三文の徳って言うしね」
その言葉に、ははっ、と乾いた笑いが漏れた。
“徳”ねぇ…。
「じゃあ、お母さん!あたしもう時間だから……」
『あ、ごめんなさいね。じゃあ今日一日、頑張って』
「うん、じゃあね」
そう言って、電話を切った。
鞄の中にケータイをしまおうとした時、オレンジ色のタオルが視界に入った。
明日、洗って返さなくちゃ…。



