そして、緒川くんから貸してもらったオレンジ色のタオルは、鞄の中にしまった。 あたしは屋上の隅に華を置いて、音楽室へと向かった。 ――ギィ 良かった…鍵開いてて。 一日来なかっただけで、どうしてこんなにも久しぶりに感じるのだろう。 あたしは準備室から、バリトンサックスを運び出した。 「…久しぶり」 ぽつりと、そう呟く。 優しく楽器を撫でる。 「…コンクール、頑張ろうね」 そう小さく呟きながら、あたしはケースからバリトンサックスを取り出した。