あたしは、本当に最低な人間だ。
触るな、と言ったのに、
どうしてこんなにも、あなたに触れられなかったことが、悲しいの。
どうして、触れてほしいなんて、思ってるの。
彼はあたしに背を向けて、扉の方へ歩いて行った。
「……緒川くんっ…!!」
こんな声、出したことない。
こんな、すがるような声。
あたしの言葉を聞いて、彼は足を止めて、こちらに振り返った。
どうしよう、なにか、言わなきゃ。
でも、言葉が見つからない。
今この状況で、あたしは彼になんて伝えればいいのか。
ごめんなさいって、謝る?
ありがとうって、お礼を言う?
それとも―――…
「お前は、死なないよ」



