“悩みとか、俺に言え”
あなたは、そう言ったよね。
…じゃあ言うけど、
あたしを助けてよ。
――ギィッ
重い扉の音が頭に響いた。
「栗田…」
上に向けていた顔を、正面に戻した。
「これ、お前のだろ?」
そう言って前に差し出されたのは、あたしが落としたケータイ。
黙ってあたしはそれを受け取った。
ケータイって、硬いよなぁ。
緒川くん、こんなのが頭に当たったんだ。
「もう、落とすなよ」
そう言って彼は、あたしの頭を撫でようとした。
でも、触れる寸前で、なにかを思い出したように手を引っ込めた。
きっと、あたしが触らないでと言ったから…。



