あたしは鞄からケータイを取り出した。 そして、電話帳から、彼の名前を探す。 【緒川くん】 あった。 ……良かった…。 名前を確認したあたしは、ケータイをポケットにしまった。 ふいに、空を見上げた。 …鳥だ。 きっと、昨日も飛んでいた鳥だろう。 こんなあたしを嘲笑うかの様に飛んでいる。 その大きな翼で、大きな空を、優雅に飛んでる。 …連れてって。 もう、誰も知らないところに、あたしを連れて行ってよ。 フェンスの網に、足を掛ける。 このフェンスを乗り越えれば、 …楽に、なれる?