「麗紀ー!お風呂入んなさーい!」
一階から、お母さんが叫んだ。
「は、はーい!すぐ行くー!」
すごい鼻声だったけど、気づいてないよね。
行かなきゃ。
ここで部屋から出なかったら、変だと思われる。
あたしは顔が見えないように、髪で顔を隠して部屋を出た。
丁度その時、お父さんが帰ってきた。
「あら、お父さん。おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
あたしもお父さんに「おかえり」と言おうと、階段を降りようとした。
でも―――
「…麗紀は、…大丈夫だったか?」
ピタリと、足が止まった。
「えぇ、…大丈夫よ」
「そうか…」
小さい声で、お父さんとお母さんが話してる。
あたしは、よく地獄耳だと言われる。
小さいころ、大人がコソコソ話すのをよく盗み聞きしていたからかもしれない。
でも、今のは聞きたくなかった。