「…………」
それは必然的に、部活の顧問の耳にもその話が入ってしまう。
そんなことになったら、あたしは冬コンに出られないかもしれない。
“体調が心配だから”という理由で、あたしはコンクールメンバーから外されるかもしれない。
それだけは、イヤだ。
冬コンというのは、あたしにとって、
人生最後のコンクールになってしまったから。
「……その、もしも学校で倒れたりしたら……」
お母さんが申し訳なさそうに言う。
「分かった……。でも、先生に“クラスのみんなには言わないで”って言っておいて。……これだけは、お願い……」
最後の方の言葉は、なんだか震えてしまった。
「……ありがとうね、麗紀」
そう言ってお母さんは「夕飯の支度するわね」と言って、洗面所を出て行った。



