低く、落ち着いた声に言うから、少し驚いてしまった。
「ま、なんかあったら電話しろよ。メールでもいいし」
そう言って彼は帰っていった。
……本当に、なんだったんだろう。
いつもと同じ時間を過ごしたはずなのに、今日はとても長く感じた。
「……麗紀?」
背後から、聞きなれた声が聞こえた。
「お母さん……」
「麗紀……おかえりなさい」
お母さんは両手に大きな荷物を持っていた。
小柄で痩せているから、大きな荷物がさらに大きく見える。
「持つよ。貸して、荷物」
「あ、いいのよ。二の腕ダイエットよ」
「二の腕……。いいから、片方だけでも」
「そう……?」
お母さんは少し申し訳なさそうに言って、あたしに荷物を渡した。



