「ほら、乗れって」
そう言って、緒川くんはチャリの後ろを指差した。
「あたし乗せてあの坂は、キツいでしょ」
下りならまだしも、上りはキツ過ぎる。
「いや、帰りは違う道で帰るからあの坂は行かねぇよ」
「えぇ!?違う道あったの!?」
当たり前のように「うん」と答えた緒川くん。
ちがう道があったなら、行きもその道で来れば良かったのに……。
でも、この人はきっとあたしを面白がって、わざわざあの急な坂道を選んだんだろう。
「ほら、だから乗れって」
「……お願いします」
あたしは戸惑いながらも、緒川くんの後ろに座った。



