息吹からもらった饅頭を縁側に座って食べていた若葉は、百鬼夜行に出るために集まった百鬼たちの輪に加わっていた銀をじっと見つめていた。
女遊びは相変わらずするし、それでも家毎日帰って来てくれる。
大抵朝餉は一緒に食べてくれるが、日中は数時間寝た後に出かけて、夕方まで帰って来ない。
その間は大体こうして主さまの家に行くか、それとも――
「わかばー」
玄関の方から聴こえた若い男の声にいち早く気付いた銀は、若葉が腰を浮かして玄関の方に目を遣ったのを見逃さなかった。
主さまの屋敷をこうして尋ねてくる者も少なく、ましてや若葉にはその声に聴き覚えがあったので、小走りに玄関に向かった若葉を皆が見つめている中、銀がこっそり後を追いかけて行った。
「やっぱりここに居た。今日も夜は1人なんだろ?うちに遊びに来ない?」
「いいの?でもお家なんて…おじさんとおばさんが心配するんじゃ…」
「うちは大丈夫。若葉が1人で家に居る方が危ないって心配してるから、うちに来いよ」
堂々と若葉を家に誘った男はそれなりに背が高く、目が大きくて活発そうな男だった。
百鬼たちが口笛を吹いたりして囃す中、知らない男がいきなり現れて若葉に手を伸ばしたので、いらっとした銀が前に進み出て男が伸ばした右腕を思いきり掴んで悲鳴を上げさせた。
「いたたたっ」
「ぎんちゃん駄目。ひのえちゃんは寺子屋で仲良くしてくれてる男の子なの。もうお家にも何回か行ったことがあるし大丈夫だから」
「なんだと?そんなの初耳だぞ。…お前、名を名乗れ。歳は幾つだ。人なんだな?若葉をどう思っている?」
矢継ぎ早に質問を浴びせては瞳を光らせた銀に恐れ戦いた男は、脚が震えそうになりながらも、銀に頭を下げた。
「丙(ひのえ)と言います。歳は18です。家は百姓で、米や野菜を作っています。人だし、若葉のことは…」
一旦言葉を切り、見上げてくる若葉の頭を撫でた丙は、きっと顔を上げて、銀を真っ向から見つめた。
「若葉を嫁さんに貰いたいと思ってます。近いうち…銀さんにそれを伝えに行くつもりでした」
「…若葉を…嫁にだと?」
銀の耳が思いきり垂れたのを見た若葉が銀の腕に抱き着き、銀が丙に襲い掛かりそうになるのを引き留めて首を振る。
丙の告白にももちろん驚いたが…だが銀が自分と人の男を夫婦にしようと思っていることを知っていた。
「ぎんちゃん…私は自分のことは自分で決めるから口出ししないで」
「…若葉…」
言葉を失い、立ち尽くす銀。
また朔もその様子をこっそり見守りつつ、握った息吹の手に力を込めていた。
女遊びは相変わらずするし、それでも家毎日帰って来てくれる。
大抵朝餉は一緒に食べてくれるが、日中は数時間寝た後に出かけて、夕方まで帰って来ない。
その間は大体こうして主さまの家に行くか、それとも――
「わかばー」
玄関の方から聴こえた若い男の声にいち早く気付いた銀は、若葉が腰を浮かして玄関の方に目を遣ったのを見逃さなかった。
主さまの屋敷をこうして尋ねてくる者も少なく、ましてや若葉にはその声に聴き覚えがあったので、小走りに玄関に向かった若葉を皆が見つめている中、銀がこっそり後を追いかけて行った。
「やっぱりここに居た。今日も夜は1人なんだろ?うちに遊びに来ない?」
「いいの?でもお家なんて…おじさんとおばさんが心配するんじゃ…」
「うちは大丈夫。若葉が1人で家に居る方が危ないって心配してるから、うちに来いよ」
堂々と若葉を家に誘った男はそれなりに背が高く、目が大きくて活発そうな男だった。
百鬼たちが口笛を吹いたりして囃す中、知らない男がいきなり現れて若葉に手を伸ばしたので、いらっとした銀が前に進み出て男が伸ばした右腕を思いきり掴んで悲鳴を上げさせた。
「いたたたっ」
「ぎんちゃん駄目。ひのえちゃんは寺子屋で仲良くしてくれてる男の子なの。もうお家にも何回か行ったことがあるし大丈夫だから」
「なんだと?そんなの初耳だぞ。…お前、名を名乗れ。歳は幾つだ。人なんだな?若葉をどう思っている?」
矢継ぎ早に質問を浴びせては瞳を光らせた銀に恐れ戦いた男は、脚が震えそうになりながらも、銀に頭を下げた。
「丙(ひのえ)と言います。歳は18です。家は百姓で、米や野菜を作っています。人だし、若葉のことは…」
一旦言葉を切り、見上げてくる若葉の頭を撫でた丙は、きっと顔を上げて、銀を真っ向から見つめた。
「若葉を嫁さんに貰いたいと思ってます。近いうち…銀さんにそれを伝えに行くつもりでした」
「…若葉を…嫁にだと?」
銀の耳が思いきり垂れたのを見た若葉が銀の腕に抱き着き、銀が丙に襲い掛かりそうになるのを引き留めて首を振る。
丙の告白にももちろん驚いたが…だが銀が自分と人の男を夫婦にしようと思っていることを知っていた。
「ぎんちゃん…私は自分のことは自分で決めるから口出ししないで」
「…若葉…」
言葉を失い、立ち尽くす銀。
また朔もその様子をこっそり見守りつつ、握った息吹の手に力を込めていた。

