「息吹、俺の話を聴け」
「……」
無言のまま台所に立って洗い物を始めた息吹の隣に立った主さまは、久々に見た息吹の膨れっ面を見つめて腕を握った。
今まで夫婦喧嘩らしいことはほとんどしたことがないが、それでも長くこじらせるつもりはなく、今まで黙っていたのは息吹に知らせることでもないとずっと思っていたからだ。
「息吹」
「…どうして教えてくれなかったの?」
「教える必要がなかったからだ。鬼八が居なくなった今、嫌でも妻を迎えなければならなかった時代は終わった。どうあっても子を作らなければならない時代は終わったんだ。だから俺はお前だけでいい」
「…沢山子供を作って、その中から力の強い子が鬼八さんを封印してたってこと…?」
「元々は長子が受け継ぐ。つまり俺だ。だがもう必要ないだろう?慣習は今後も残るだろうが…お、お前以外には考えられない。…何度も言わないからな」
くるりと背を向けて少し怒った顔を見せている主さまが本当は照れていることにすぐ気付いた息吹は、大きなため息をついて、手拭いで手を拭いた。
…主さまの元に嫁ぐにあたって、きっと我慢しなければならないことも沢山あるだろうと覚悟していたが…今まで耐えなければならないことなど一切なく、むしろ子が増える毎に主さまが穏やかになり、表情が増えたことが喜ばしかったのだ。
「この前主さまの実家に行った時に、潭月さんから聴いておけばよかった…」
「親父にか?あれがまともな返答をするものか。…だが朔には妻を何人も迎えていいという習わしがある。あいつがそれを望むならば、最初の妻は若葉でもいい。だが…死別はつらいぞ」
元々交わってはならない存在なのだから、必ず悲劇を迎えることになってしまうが――朔と若葉が恋仲になるようであれば、それを引き裂くつもりは主さまも息吹もない。
問題は銀なのだろうが…銀もまともに本音を明かすような性質ではなく、事態はややこしくなるばかりだ。
「主さま…私が人の寿命を迎えて死んだとしても…奥さんにしてくれた?」
「当然だろう。お前が死んだ後も2人目の妻を迎えるつもりはなかった。…この話はやめよう、想像だけで胸が痛む」
嬉しくなると同時に目尻に涙が溜まった息吹を抱きしめた主さまは、子供たちに邪魔をされないように台所の戸を閉めると、息吹と口づけを交わした。
「……」
無言のまま台所に立って洗い物を始めた息吹の隣に立った主さまは、久々に見た息吹の膨れっ面を見つめて腕を握った。
今まで夫婦喧嘩らしいことはほとんどしたことがないが、それでも長くこじらせるつもりはなく、今まで黙っていたのは息吹に知らせることでもないとずっと思っていたからだ。
「息吹」
「…どうして教えてくれなかったの?」
「教える必要がなかったからだ。鬼八が居なくなった今、嫌でも妻を迎えなければならなかった時代は終わった。どうあっても子を作らなければならない時代は終わったんだ。だから俺はお前だけでいい」
「…沢山子供を作って、その中から力の強い子が鬼八さんを封印してたってこと…?」
「元々は長子が受け継ぐ。つまり俺だ。だがもう必要ないだろう?慣習は今後も残るだろうが…お、お前以外には考えられない。…何度も言わないからな」
くるりと背を向けて少し怒った顔を見せている主さまが本当は照れていることにすぐ気付いた息吹は、大きなため息をついて、手拭いで手を拭いた。
…主さまの元に嫁ぐにあたって、きっと我慢しなければならないことも沢山あるだろうと覚悟していたが…今まで耐えなければならないことなど一切なく、むしろ子が増える毎に主さまが穏やかになり、表情が増えたことが喜ばしかったのだ。
「この前主さまの実家に行った時に、潭月さんから聴いておけばよかった…」
「親父にか?あれがまともな返答をするものか。…だが朔には妻を何人も迎えていいという習わしがある。あいつがそれを望むならば、最初の妻は若葉でもいい。だが…死別はつらいぞ」
元々交わってはならない存在なのだから、必ず悲劇を迎えることになってしまうが――朔と若葉が恋仲になるようであれば、それを引き裂くつもりは主さまも息吹もない。
問題は銀なのだろうが…銀もまともに本音を明かすような性質ではなく、事態はややこしくなるばかりだ。
「主さま…私が人の寿命を迎えて死んだとしても…奥さんにしてくれた?」
「当然だろう。お前が死んだ後も2人目の妻を迎えるつもりはなかった。…この話はやめよう、想像だけで胸が痛む」
嬉しくなると同時に目尻に涙が溜まった息吹を抱きしめた主さまは、子供たちに邪魔をされないように台所の戸を閉めると、息吹と口づけを交わした。

