主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

銀の告白はしばらくの間主さまを笑わせた後、目じりを拭いながら腕を組んで座り直した。


「女に見えたからといって、なんだ?何かするつもりなのか」


「何かする、とは?十六夜、お前の時はどうだった?息吹が女に見えたから手を出したんだろうが。…どうしたらいいんだ、これから添い寝ができなくなるじゃないか」


「…俺を引き合いに出すな。いちいち回りくどい言い方をするな」


珍しくも主さまから言い負かされてしまった銀が再び押し黙り、そうしているうちに襖をぽすぽすと叩く音がして、主さまが襖を開けると…そこには熱いお茶を淹れた息吹がにこにこ顔で立っていた。


「主さま、はいお茶。難しいお話してるの?銀さん、耳が倒れてるよ」


「お、そうか。ちょうどいい、お前も加われ。女の意見も聴きたい」


息吹がきょとんとしていると、主さまが盆を持って息吹の手を引いて招き入れる。

口の重たい銀は、単刀直入に息吹に切りだした。


「若葉が女に見えるようになったんだ。…若葉に何か心境の変化でもあったんだろうか?何か悩みでも打ち明けられたか?」


「え…若葉が女に見えるようになったって…それってつまり…銀さんが若葉をお嫁さんに欲しいって思ってるってこと?」


「いや…そういうわけじゃない。若葉は人と夫婦になるのが最良だと思っている。だが…以前のように接してやれなくなるんじゃないかと思うと…それが怖くてな」


弱気なことを口にして若葉を想う銀の殊勝な様子に息吹がきゅんとした顔をすると、主さまがむっとして息吹の肩を抱き、ぐいっと引き寄せた。


「女に見えるようになったから、他の男に手を出される前に手を出して手に入れたんだ。それと何が違う?若葉に手を出しそうになっているから動揺しているんじゃないのか?」


銀はじっくり考え、若葉に手を出す想像をしてみたが…まだそこまで考えが及ばず、考えてもいなかったことを考えたがために、ほんのり頬を赤くした。

息吹としては、いずれ銀と若葉が夫婦になるのではと思っていたので反対はしないが…朔のこともある。

幼馴染として共に同じ時を過ごしてきた朔と若葉の関係性も少しずつではあるが進展しているように見えるし…願うのは、若葉の幸せだ。


「銀さん、無理強いは駄目だよ。若葉が嫌がってることは絶対しないであげて。主さまは私が嫌がってることは絶対しないでくれたから。ね、主さま」


「…あ、ああ」


主さまの頬もほんのり赤くなり、3人は顔をかっかっ赤くして秘密の会合を終えた。