若葉が息吹の元へ行って楽しげに話をしている間にようやく腰を上げられるようになった銀は、まだ縁側に座っていた朔の前を素通りして草履を脱ぐと、屋敷の中へ上がった。
「お父様に用なのか?まだ寝てるから起こさない方がいいぞぎん」
「俺の名は、かねしろだ。ぎんぎんうるさい。若葉にもそう言っておけ」
「自分で言え。ぎん、俺は数年の内に百鬼夜行を継ぐ。お前は俺の手下になる。それが嫌なのであれば、俺と戦って俺が敗けたら抜けていい。それでどうだ」
さすがに主さまの長子と言えるほどに朔の妖力は絶大なものがあり、無邪気にその力を振るうものだから、百鬼たちも実際戦々恐々だ。
軽口には付き合うが、ひとつ間違って機嫌を損ねれば、恐ろしい仕返しが待っている。
そんな絶妙な緊張感を味わいたいと思っている百鬼たちもまた多く、主さまとは違う魅力に取りつかれている者も多い。
「ほほう、俺とやり合いたいのか?お前とはいつか一戦やらねばと思っていたところだ。…若葉の件もあるしな」
「若葉の件?なんのことを言っているのかわからない。ぎん、若葉を悩ませるな。若葉は人だから、俺たちとは違う生き物なんだ。お前が考えられないような繊細な生き物なんだ」
「…知ったような口を利くな、餓鬼が」
少し強めに朔の頭を殴った銀は、主さまと息吹の部屋の前でひっそり声をかけた。
機嫌が悪いのは重々承知だが…どうしても主さまに聴いてほしいことがあり、居ても立っても居られなくなっていた。
「十六夜、話がある。少しでいいから聴いてくれ」
「………なんだ」
「皆に聴かれたくない。場所を変えてから話したい」
しばらくしてからのそりと部屋から出て来た主さまの顔はあからさまに不機嫌だったが、無言のまま元々息吹の部屋だった続き部屋に銀を案内すると、結界を張って話を聴かれないようにした。
だが銀はなかなか悩みを打ち明けることができずにじっと主さまの顔を見つめ、主さまは腕を組んで欠伸をしながら銀をじっと見つめる。
しばらくそうしていたが、銀が一向に話をしようとしないので、主さまが腰を上げようとした時――
「…若葉が…女に見える」
ようやく絞り出した銀の告白は、主さまの目を白黒させた後――肩を揺らして笑いを噛み殺し、銀を仏頂面にさせた。
「…何がおかしい」
かつての自分の悩みと同じなことがおかしかった主さまは、しばらくの間笑いのつぼから抜け出せずに笑い続けた。
「お父様に用なのか?まだ寝てるから起こさない方がいいぞぎん」
「俺の名は、かねしろだ。ぎんぎんうるさい。若葉にもそう言っておけ」
「自分で言え。ぎん、俺は数年の内に百鬼夜行を継ぐ。お前は俺の手下になる。それが嫌なのであれば、俺と戦って俺が敗けたら抜けていい。それでどうだ」
さすがに主さまの長子と言えるほどに朔の妖力は絶大なものがあり、無邪気にその力を振るうものだから、百鬼たちも実際戦々恐々だ。
軽口には付き合うが、ひとつ間違って機嫌を損ねれば、恐ろしい仕返しが待っている。
そんな絶妙な緊張感を味わいたいと思っている百鬼たちもまた多く、主さまとは違う魅力に取りつかれている者も多い。
「ほほう、俺とやり合いたいのか?お前とはいつか一戦やらねばと思っていたところだ。…若葉の件もあるしな」
「若葉の件?なんのことを言っているのかわからない。ぎん、若葉を悩ませるな。若葉は人だから、俺たちとは違う生き物なんだ。お前が考えられないような繊細な生き物なんだ」
「…知ったような口を利くな、餓鬼が」
少し強めに朔の頭を殴った銀は、主さまと息吹の部屋の前でひっそり声をかけた。
機嫌が悪いのは重々承知だが…どうしても主さまに聴いてほしいことがあり、居ても立っても居られなくなっていた。
「十六夜、話がある。少しでいいから聴いてくれ」
「………なんだ」
「皆に聴かれたくない。場所を変えてから話したい」
しばらくしてからのそりと部屋から出て来た主さまの顔はあからさまに不機嫌だったが、無言のまま元々息吹の部屋だった続き部屋に銀を案内すると、結界を張って話を聴かれないようにした。
だが銀はなかなか悩みを打ち明けることができずにじっと主さまの顔を見つめ、主さまは腕を組んで欠伸をしながら銀をじっと見つめる。
しばらくそうしていたが、銀が一向に話をしようとしないので、主さまが腰を上げようとした時――
「…若葉が…女に見える」
ようやく絞り出した銀の告白は、主さまの目を白黒させた後――肩を揺らして笑いを噛み殺し、銀を仏頂面にさせた。
「…何がおかしい」
かつての自分の悩みと同じなことがおかしかった主さまは、しばらくの間笑いのつぼから抜け出せずに笑い続けた。

