妖の10年は瞬きをしている間に過ぎてしまう。
だが人間もそうなのか…銀が気付かない間に若葉はどんどん成長して背も伸びて、顔立ちもだんだん変わってきた。
相変わらずあまりはしゃいだり笑みを見せることはなかったが、手足がすらりと伸びて、少し吊った瞳が印象的で、女に見えるようになった。
時々一緒に入っていた風呂にもある日突然入らなくなり、添い寝をしても童子の時のように抱き着いてきたりすることもない。
…一抹の寂しさを覚えた銀は、最近まためっきり料理の腕が上がった若葉の手料理を食べながら、上目遣いで若葉を見ていた。
「どうしたのぎんちゃん。お代わりする?」
「いや、いい。それよりお前…幾つになった?最近また背が伸びただろう?」
「15。今年で寺子屋に通うのはもうやめるの。お姉ちゃんが花嫁修業をつけてくれるって言ってた」
「…花嫁修業だと?お前まさか朔と…」
曖昧に笑って答えない若葉がすまし汁を飲んだ後台所へ行って片づけを始めてしまい、何故か焦った銀は食器を台所へ持って行って若葉の隣に立つと、真っ白で細い手から視線が逸らせないまま追及した。
「朔に求婚されたのか?」
「違うよ朔ちゃんはなんにも言ってないから。でも最近すごく大人っぽくなって…主さまそっくりだけど無邪気なの。女の妖にもてて大変みたい」
「そうか…。だが何故花嫁修業をつける必要がある?好いた男が居るのか?どんな奴だ?人なんだろうな?」
「教えない。ぎんちゃんだって女の人と沢山遊んでるでしょ。ばれてないと思った?ぎんちゃんから違う匂いがするからすぐわかるんだから」
女の香りが着物や首筋や唇から香り、そんな銀に添い寝されて抱きしめられる度に嫌悪を感じてしまっていた若葉は、着ている濃紺の着物の袖をくんくんと嗅いだ銀を振り払うようにして外に出ると、物干しざおに干していた洗濯物を取り込んだ。
何故か物欲しげな瞳でじっとこちらを見ている銀――“男は鈍感な生き物”と息吹から教えられていた若葉は、なるほどと思いながらまた銀の横を素通りして家の中に入る。
「若葉、この着物も洗ってくれ。…女の匂いがするんだろう?気が付かなかった」
「嗅ぎ慣れてるから鼻が麻痺してるんじゃない?その辺に置いておいて。私お姉ちゃんの所に行って来るね」
――最近、“ちゃんと帰って来てね”と言ってくれない。
何故なのか、寂しくて寂しくて仕方なくなった銀は、家を出て行こうとする若葉の腕を強く握って離さなかった。
だが人間もそうなのか…銀が気付かない間に若葉はどんどん成長して背も伸びて、顔立ちもだんだん変わってきた。
相変わらずあまりはしゃいだり笑みを見せることはなかったが、手足がすらりと伸びて、少し吊った瞳が印象的で、女に見えるようになった。
時々一緒に入っていた風呂にもある日突然入らなくなり、添い寝をしても童子の時のように抱き着いてきたりすることもない。
…一抹の寂しさを覚えた銀は、最近まためっきり料理の腕が上がった若葉の手料理を食べながら、上目遣いで若葉を見ていた。
「どうしたのぎんちゃん。お代わりする?」
「いや、いい。それよりお前…幾つになった?最近また背が伸びただろう?」
「15。今年で寺子屋に通うのはもうやめるの。お姉ちゃんが花嫁修業をつけてくれるって言ってた」
「…花嫁修業だと?お前まさか朔と…」
曖昧に笑って答えない若葉がすまし汁を飲んだ後台所へ行って片づけを始めてしまい、何故か焦った銀は食器を台所へ持って行って若葉の隣に立つと、真っ白で細い手から視線が逸らせないまま追及した。
「朔に求婚されたのか?」
「違うよ朔ちゃんはなんにも言ってないから。でも最近すごく大人っぽくなって…主さまそっくりだけど無邪気なの。女の妖にもてて大変みたい」
「そうか…。だが何故花嫁修業をつける必要がある?好いた男が居るのか?どんな奴だ?人なんだろうな?」
「教えない。ぎんちゃんだって女の人と沢山遊んでるでしょ。ばれてないと思った?ぎんちゃんから違う匂いがするからすぐわかるんだから」
女の香りが着物や首筋や唇から香り、そんな銀に添い寝されて抱きしめられる度に嫌悪を感じてしまっていた若葉は、着ている濃紺の着物の袖をくんくんと嗅いだ銀を振り払うようにして外に出ると、物干しざおに干していた洗濯物を取り込んだ。
何故か物欲しげな瞳でじっとこちらを見ている銀――“男は鈍感な生き物”と息吹から教えられていた若葉は、なるほどと思いながらまた銀の横を素通りして家の中に入る。
「若葉、この着物も洗ってくれ。…女の匂いがするんだろう?気が付かなかった」
「嗅ぎ慣れてるから鼻が麻痺してるんじゃない?その辺に置いておいて。私お姉ちゃんの所に行って来るね」
――最近、“ちゃんと帰って来てね”と言ってくれない。
何故なのか、寂しくて寂しくて仕方なくなった銀は、家を出て行こうとする若葉の腕を強く握って離さなかった。

