主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

若葉を抱っこした銀が息吹たちの前に姿を現すと、それまで膨れっ面だった息吹はようやく肩で息をついて、傍らに用意していた掛け布団と敷布団をぽんぽんと叩いた。


「これ、新しいお布団だから使ってね。お金は要らないし、うちで使ってないやつだから気にしないで。あと銀さん、今日は百鬼夜行に出なくていいから。ね、主さま」


「ああ、出なくていい。若葉が幼いうちは頻繁に休んでも構わない。わかったらもう帰れ」


…主さまなりの気遣いだと悟った銀はがぴょこぴょこ尻尾と耳を動かすと、若葉が両耳をいじりながら首に抱き着き、息吹と主さまに手を振った。

息吹が手を振り返すと、布団を一気に腕に担いだ銀の尻尾を握った若葉と一緒に屋敷を去り、丘を上がっているうちに、若葉の足取りが鈍くなる。


「若葉、どうした?」


「…ぎんちゃん…お家にまだあの女の人…居るの?」


「居ないと思う。というか、もう家には呼ばない。さあ、戸と窓を開け放って喚起をして、布団を捨てて、栗ご飯を頂こうか」


「うん。ぎんちゃん…お嫁さんを貰うのなら言ってね。私…邪魔になりたくないから、その時はお姉ちゃんの子供にしてもらうから」


「妙なことを言うなよ。俺が嫁を貰ってもお前は俺の子だ。ま、お前が生きているうちは嫁を貰うつもりはない」


わかっているのかわかっていないのか…こくんと頷いた若葉と一緒に家に入り、銀が換気をして古い布団を捨てて新しい布団を押入れに入れている間、若葉が栗ご飯を仕込む。

百鬼夜行を休んでいいということは…これからはもう少しだけ長く銀と一緒に居れるということ。

その分女遊びに時間を費やされてしまえば結局一緒なので、手が空いた時に銀の膝に上がって両頬を引っ張った。


「ぎんちゃん、女の人と遊ぶ時は私がわからないようにしてね。駄目?」


「駄目じゃないが…わかった。もうお前を放っておいたりしないから、十六夜のところの子になるとか言うなよ。あとお前の婿候補が朔なのもいやだからな。あいつは俺をやり込めようと必死だし、むかつく」


「朔ちゃんは優しいよ?でも私の方が先に死んじゃうから朔ちゃんのお嫁さんは無理。ぎんちゃん、今度お姉ちゃんが寺子屋に連れて行ってくれるって言ってた。行ってもいい?」


若葉が目の届かないところに行くのは許せなかったが、人の友人を作るのは大切だ。

仕方なくといった態で頷いた銀に笑顔を見せた若葉は、人と話せるかもしれない喜びにその夜はなかなか眠れなかった。