主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

仕方なくといった感じで主さまの隣に腰を下ろした銀は、なおも朔に連れて行かれた別の部屋の方へ視線を遣っていた。


「…俺が言いたいのは以上だ」


「一言も言ってないじゃないか。どうせ俺が悪いと言いたいんだろう?今まで女を連れ込んでもあんなに不機嫌になったことはないのに…何故だ?」


「…俺もお前も女心に疎い。童子だと思って侮っていたら、いつの間にか女になってしまう。…息吹がそうだった」


「息吹と若葉が同じだと言いたいのか?同じだとすれば、最終的には若葉が俺の妻になる運びになるが…」


主さまはその問いに敢えて答えず、自身の過去を振り返りながらも首を振った。


「どう捉えるかはお前次第だな。とにかくお前が若葉を泣かせれば、ひいては息吹が泣いてしまう。そうなれば俺が黙っていないからな」


「お前は相変わらず息吹一筋だな。つまり俺に女遊びをするな、と言いたいのか?」


「家に連れ込むなと言っている。これからもっと多感な時期に入るぞ。お前が選択を間違えば、若葉の性格が曲がってしまう可能性もある」


…すでに若葉の表情はあまり動くこともなければ、我が儘を言ったこともない。

童子らしくない若葉だったが、最近少しずつ笑みを見せるようになって喜んでいたのに――


「…謝ってくる。それも止めるか?」


「いや、行って来い。朔が立ち塞がるだろうから俺が呼んでいると言って部屋から連れ出せ」


重たい腰を上げた銀は、ふかふかの耳をかきながら奥の部屋へと行き、声もかけずに襖を開けた。

そこにはしっかりと若葉の手を握って隣に座っている朔が居たのでまたむっとなった銀は、ぞんざいな態度で朔を見下ろしながら朔の手を引っ張って無理矢理立ち上がらせた。


「十六夜が呼んでいるから行ってきた方がいいぞ」


「お父様が?……これ以上若葉を泣かせるなよぎん」


「うるさい。早く行け」


早々に部屋から追い出して襖を閉めた銀は、膝を抱えてまん丸になっている若葉の隣に腰を下ろすと、無言で頭を撫でた。

否定はされなかったが顔を上げる気配はなく、銀もなんと声をかければいいのかわからず、無言で頭を撫で回す。


「……ぎんちゃん痛い」


「すまん。…色々すまなかった。もう家には女を連れ込まないから怒らないでくれ」


ぐす、と鼻を啜る音がした。

なんだか無性に愛しくなって、俯いたままの若葉を膝に乗せると、若葉が壊れない程度にぎゅうっと抱きしめた。