息せき切って戻ってきた若葉は、庭の花に水を遣っていた息吹の腰に抱き着いて顔を隠した。
「若葉?栗ご飯を仕込んでくるんじゃ…」
「…お姉ちゃん…お布団…新しいのが欲しいな…」
「お布団?それはいいけど…お布団がどうしたの?」
「お布団…汚れちゃったから。綺麗なのが欲しいの。お金は後でぎんちゃんから貰って」
少し声が震えているように聴こえたので、息吹が膝を折って唇を噛み締めている若葉を優しく問い質そうとした時――銀が同じように息を切らしながら庭に駆けこんできた。
そして若葉と目が合うと、若葉が逃げるように息吹の背中に隠れた。
「若葉…どうしたんだ?俺がお前を怒らせたのか?」
「…」
「銀さん、お布団が汚れちゃったって若葉が言ってるけど…どういう意味?若葉はどうして悲しい顔をしてるの?」
「布団が汚れた?……ああ、もしかして…俺が女と布団の上に座っていたからか?」
――あの布団はいつも若葉が使っているもの。
時々銀が添い寝をしてくれて、銀の匂いがついていて、独りでも安心して寝ることができるのに――部屋には白粉の匂いが充満していて、きっとあの布団にもその匂いがついたはず。
若葉にとっての聖域が侵されてしまい、ついに若葉の口から小さな嗚咽が漏れた。
どんな小さな音でも見逃さない銀の耳がぴんと跳ねて若葉の嗚咽を聞き取り、勝手に身体が1歩前進したが、息吹が若葉を背中に庇ったまま1歩後退する。
「朔ちゃん、若葉をお部屋に連れて行って。台所にお茶とお饅頭があるから2人で食べててね、私もすぐに行くから」
「はい。…若葉、こっちにおいで」
縁側の柱の影からこっそり見守っていた朔が庭に降りて若葉の手を引くと、今度は朔にしがみついて離れなくなった。
いらっとした銀が文句を言おうと口を開いたが、非難を込めた強い眼差しで迫ってきた息吹の迫力に口が閉じてしまい、自然に耳と尻尾が垂れてしまう。
「息吹…俺が悪いのか?」
「もちろんそうでしょ。若葉はまだ小さいのに、あのお家に女の人を連れ込んだの?しかも若葉が寝てる布団で何してたの?…若葉はいつもあの家で銀さんを待ってるの。あの家を守ってるの。それなのに銀さんったら…主さまに怒られてきて。主さま!」
今度は息吹が泣きそうな声で叫ぶと、すぐに主さまが部屋から姿を現す。
主さまの冷えた眼差しにさらに耳と尻尾が垂れた銀は、とぼとぼとした足取りで主さまの元へ向かった。
「若葉?栗ご飯を仕込んでくるんじゃ…」
「…お姉ちゃん…お布団…新しいのが欲しいな…」
「お布団?それはいいけど…お布団がどうしたの?」
「お布団…汚れちゃったから。綺麗なのが欲しいの。お金は後でぎんちゃんから貰って」
少し声が震えているように聴こえたので、息吹が膝を折って唇を噛み締めている若葉を優しく問い質そうとした時――銀が同じように息を切らしながら庭に駆けこんできた。
そして若葉と目が合うと、若葉が逃げるように息吹の背中に隠れた。
「若葉…どうしたんだ?俺がお前を怒らせたのか?」
「…」
「銀さん、お布団が汚れちゃったって若葉が言ってるけど…どういう意味?若葉はどうして悲しい顔をしてるの?」
「布団が汚れた?……ああ、もしかして…俺が女と布団の上に座っていたからか?」
――あの布団はいつも若葉が使っているもの。
時々銀が添い寝をしてくれて、銀の匂いがついていて、独りでも安心して寝ることができるのに――部屋には白粉の匂いが充満していて、きっとあの布団にもその匂いがついたはず。
若葉にとっての聖域が侵されてしまい、ついに若葉の口から小さな嗚咽が漏れた。
どんな小さな音でも見逃さない銀の耳がぴんと跳ねて若葉の嗚咽を聞き取り、勝手に身体が1歩前進したが、息吹が若葉を背中に庇ったまま1歩後退する。
「朔ちゃん、若葉をお部屋に連れて行って。台所にお茶とお饅頭があるから2人で食べててね、私もすぐに行くから」
「はい。…若葉、こっちにおいで」
縁側の柱の影からこっそり見守っていた朔が庭に降りて若葉の手を引くと、今度は朔にしがみついて離れなくなった。
いらっとした銀が文句を言おうと口を開いたが、非難を込めた強い眼差しで迫ってきた息吹の迫力に口が閉じてしまい、自然に耳と尻尾が垂れてしまう。
「息吹…俺が悪いのか?」
「もちろんそうでしょ。若葉はまだ小さいのに、あのお家に女の人を連れ込んだの?しかも若葉が寝てる布団で何してたの?…若葉はいつもあの家で銀さんを待ってるの。あの家を守ってるの。それなのに銀さんったら…主さまに怒られてきて。主さま!」
今度は息吹が泣きそうな声で叫ぶと、すぐに主さまが部屋から姿を現す。
主さまの冷えた眼差しにさらに耳と尻尾が垂れた銀は、とぼとぼとした足取りで主さまの元へ向かった。

