「さーくちゃん」
その日息吹たちも幽玄町に戻り、百鬼夜行に出るために集まった百鬼たちから代わる代わる抱っこされてあやされている赤子を見守りながら息吹が声をかけたのは、長男の朔(さく)だ。
まっすぐな黒い髪に切れ長の瞳と薄くてきれいな唇――何もかもが主さまにそっくりな朔は、縁側でみたらし団子を頬張りながら脚をぶらぶらさせていた。
「お母様?なにか御用ですか?」
「朔ちゃんは若葉のことどう思う?最近とっても仲良しでしょ?若葉は可愛いもんね」
朔の隣に座った息吹が櫛で髪を梳いてやりながら聴くと、利発で聡明な朔はすぐに息吹の魂胆を見破り、まだ団子が乗っている皿を息吹に差し出した。
「嫁候補にって意味ですか?鬼族じゃなくてもいいんですか?」
「うん、だって私は鬼族じゃなくても主さまと…お父様と夫婦になったでしょ?それにお父様は大切なお役目をもうしなくていいから、鬼族にこだわらなくてもいいの。ね、どう?若葉をどう思ってるの?」
「うーん…可愛いし一緒に居て楽しいけど…若葉はぎんのものですよね?あいつ、俺が若葉と一緒に居ると睨んでくるし邪魔してくるんです。だからぎんの目が届かないとこでなら……ってお母様…なんで笑ってるんですか?」
「え?ううん、なんでも。ねえ朔ちゃん、またちょっとお父様に似てきたね。絶対かっこよくなるよ、でもお父様みたいに女遊びしちゃ駄目だからね」
聞き捨てならないことを口にして朔と団子をもぐもぐしている息吹の言葉が耳に届いてしまった主さまは、慌てて息吹の隣に座ると、息吹の手から団子を奪い取った。
「…女遊びをしていたのはお前と夫婦になる前の話だろうが。朔、誤解するんじゃないぞ」
「はい、大丈夫です。お父様みたいに女遊びしないように気を付けます」
「……」
朔が成人すれば、百鬼夜行は朔が継ぎ、主さまは隠居して、ようやくすべての任から解き放たれる。
今度は長男の朔にその重たい宿命がのしかかるが、この長男は大器の持ち主で、嫌がりもしなければ、早く百鬼夜行を継ぐことを望んでいるようにも見えた。
「お母様たちが、俺のお嫁さん候補に若葉を入れたいのならそれでいいですよ。でもあの白狐がうるさいから俺がやり込めてもいいですか?」
「だーめ。銀さんは大切な仲間なんだから。あと、朔ちゃんが若葉をお嫁さんにしたいな、って思わなきゃお嫁さん候補には入れないから大丈夫だよ」
とにかく今はお嫁さん候補などよりも、まだ息吹に甘えたい年頃の朔は、大好きな両親の間に挟まって得意満面の笑顔になりながら、庭ではしゃいでいる弟や妹を優しい眼差しで見つめた。
その日息吹たちも幽玄町に戻り、百鬼夜行に出るために集まった百鬼たちから代わる代わる抱っこされてあやされている赤子を見守りながら息吹が声をかけたのは、長男の朔(さく)だ。
まっすぐな黒い髪に切れ長の瞳と薄くてきれいな唇――何もかもが主さまにそっくりな朔は、縁側でみたらし団子を頬張りながら脚をぶらぶらさせていた。
「お母様?なにか御用ですか?」
「朔ちゃんは若葉のことどう思う?最近とっても仲良しでしょ?若葉は可愛いもんね」
朔の隣に座った息吹が櫛で髪を梳いてやりながら聴くと、利発で聡明な朔はすぐに息吹の魂胆を見破り、まだ団子が乗っている皿を息吹に差し出した。
「嫁候補にって意味ですか?鬼族じゃなくてもいいんですか?」
「うん、だって私は鬼族じゃなくても主さまと…お父様と夫婦になったでしょ?それにお父様は大切なお役目をもうしなくていいから、鬼族にこだわらなくてもいいの。ね、どう?若葉をどう思ってるの?」
「うーん…可愛いし一緒に居て楽しいけど…若葉はぎんのものですよね?あいつ、俺が若葉と一緒に居ると睨んでくるし邪魔してくるんです。だからぎんの目が届かないとこでなら……ってお母様…なんで笑ってるんですか?」
「え?ううん、なんでも。ねえ朔ちゃん、またちょっとお父様に似てきたね。絶対かっこよくなるよ、でもお父様みたいに女遊びしちゃ駄目だからね」
聞き捨てならないことを口にして朔と団子をもぐもぐしている息吹の言葉が耳に届いてしまった主さまは、慌てて息吹の隣に座ると、息吹の手から団子を奪い取った。
「…女遊びをしていたのはお前と夫婦になる前の話だろうが。朔、誤解するんじゃないぞ」
「はい、大丈夫です。お父様みたいに女遊びしないように気を付けます」
「……」
朔が成人すれば、百鬼夜行は朔が継ぎ、主さまは隠居して、ようやくすべての任から解き放たれる。
今度は長男の朔にその重たい宿命がのしかかるが、この長男は大器の持ち主で、嫌がりもしなければ、早く百鬼夜行を継ぐことを望んでいるようにも見えた。
「お母様たちが、俺のお嫁さん候補に若葉を入れたいのならそれでいいですよ。でもあの白狐がうるさいから俺がやり込めてもいいですか?」
「だーめ。銀さんは大切な仲間なんだから。あと、朔ちゃんが若葉をお嫁さんにしたいな、って思わなきゃお嫁さん候補には入れないから大丈夫だよ」
とにかく今はお嫁さん候補などよりも、まだ息吹に甘えたい年頃の朔は、大好きな両親の間に挟まって得意満面の笑顔になりながら、庭ではしゃいでいる弟や妹を優しい眼差しで見つめた。

