主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

ある日ようやく息吹の体調も回復し、息吹を恋しがる子供たちを全員連れて来た銀は、寄ってたかってお馬ごっこをさせられて、四つん這いになると代わる代わる背中に乗ってくる餓鬼大将とじゃじゃ馬たちと遊んでやりながら、そろそろ若葉を返してもらおうと考えていた。


「おいお前たち、俺の尻尾と耳にはあまり触るんじゃないぞ」


「ぎん!もっと早く走れ!馬はもっと速いんだぞ!」


「おいこら長男、お前は大きくなったら十六夜の跡目を継いで百鬼夜行の王となる男なんだぞ。もうちょっと気品を持ってだな…」


「うるさいぞぎん!お父様のお役目を継いだら、俺がお前をこき使ってやるからな!」


…外見は完全に主さまをぎゅっと小さくしたような長男から凄まれてやれやれと銀が肩を竦めていると、縁側で遊んでいた銀たちの様子を見に来た息吹が顔を出した途端、長男が急に畏まって背中から下りた。


「こら、銀さんに乱暴な言葉使っちゃ駄目でしょ」


「う、うん…はいっ。お母様…お膝に上がってもいいですか?」


「うん、いらっしゃい。妹や弟たちのお世話はちゃんとできた?」


「はい。お母様とお父様に言われた通り、頑張りました。弟たちも膝に上がらせてあげて下さい」


「…ぶふっ」


頬を赤らめて息吹に甘える長男の態度があまりにも急にがらっと変わったので、思わず銀が噴き出すと、ぎっと睨んだ後息吹を追いかけてやって来た主さまの背中に隠れつつ銀に舌を出した。


「おい十六夜、その餓鬼大将はお前の百鬼夜行を無茶苦茶にするかもしれないな。…ん?」


目を離した隙に、長男と若葉が親しげに肩を並べて縁側に座ったのを見た銀は、多少いらっとしながら小さな小さな舌打ちを打った。

微笑ましく思わなければならないのに、くすくす笑っている2人を見ていると、どうしても邪魔をしたくなって、2人の間に割って入って座ると、長男がまたぎっと睨んできた。


「なんだ?若葉に何か用か?まずは父代りの俺に話を通してもらおうか」


「お前に話なんかないぞぎん。2人で話をしてるんだから、あっちに行ってろ」


「はあ?お前まさか若葉に気があるんじゃないだろうな?童子のくせしてませやがって」


「!き、気なんかない!ぎん、あっちに行け!」


怒られたり肩を突かれたりしたが、長男の攻撃を一切無視した銀は、ぽかんとしている若葉の頭をぐりぐり撫でて高笑いをした。