主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

なるべく長く晴明の屋敷に滞在して若葉の傍に居てやり、数時間眠るために若葉と暮らしている小さな家に帰って眠る――そしてその後は百鬼夜行。

それからしばらくの間、銀はそんな暮らしを送り、それは主さまも同じだったのだが、強靭な精神力と体力を持つ2人は全く堪えていなかった。

だが2人とも常に若葉や息吹が傍に居ないと機嫌が悪い。

銀の耳も倒れていることが多くなり、若葉と会うとぴょこんと立ち上がり、機嫌の良し悪しが一発でわかるので、いつも晴明や主さまにからかわれていた。


「お前は機嫌の良し悪しが見目ですぐにわかる。感情が隠せないというのもつらいな」


「いや、俺の機嫌が悪い時は見た目でわかるからこそ誰も話しかけてこないから楽だな。まあ若葉は俺の機嫌が悪い姿をあまり見たことがなかったから少し怖がらせてしまったが」


夜泣きをする赤子を夜通しあやしたり、食事を作ったり、襁褓を替えたり――とにかくちょこまかと動き回る若葉は元気はつらつで、一緒に暮らしている家ではそういった姿がほとんど見られないことが銀にとっては癪だ。

こうして会いに来たというのに話せる時間は少なく、だが会いに行くとすぐに駆け寄ってきて“ちゃんと会いに来てくれた”と言って喜ぶ。

そういった時は尻尾と耳がぴょこぴょこ動くので、いつも息吹たちに笑われるが、銀は若葉を抱っこして束の間2人の時を過ごした。


「あ、若葉が疲れて寝ちゃったね。沢山お手伝いしてくれてほんと助かってます。銀さん、ありがとう」


「それは若葉に言ってやれ。俺は若葉を貸しただけだ。ちなみにもう名は考えたのか?」


銀が息吹に問うと、主さまと息吹は顔を見合わせて微笑み、こくんと頷いた。


「うん、もう考えたよ。でもまだ内緒。それより銀さんはまだいい人が居ないの?遊んでばかりじゃ駄目だよ」


息吹に窘められつつ、死んだように眠っている若葉の身体を布団の上からぽんぽんと優しく叩いてやった銀は、頬を緩めながら欠伸をした。


「夫婦か…俺はそういったものに縛られたくないんだ。あと100年くらいは遊んでいたい」


「100年…じゃあ…若葉はその頃はもう居ないんだね。銀さん…わかってる?」


「…ああ、わかっている…つもりだ」


人は100年も生きられない。

だが若葉のことは生涯見守るつもりでいる。


――銀は若葉の隣に寝そべって引き寄せると腕の中に抱き込み、寝顔を見つめた。