銀の背中に無理矢理負ぶさると、無言で受け入れてくれたはいいものの、銀の耳は倒れたままだ。
何故機嫌が悪くなったのか全くわからない若葉は、おろおろしながらも手を伸ばして銀の耳を無理矢理起こすと、垂れたままの尻尾を気にしてしがみつく。
「ぎんちゃん…怒った?」
「…怒っているが、それがどうした」
「…どうして怒ったのかわかんない。私のせい?どうしたら許してくれるの?ぎんちゃんこっち向いて」
大きくため息をついた銀は肩越しに振り返り、唇を尖らせている若葉を濃紺の瞳で睨み、意地悪を言った。
「泣いて許しを請え。そうすれば許してやる」
「…泣く…?どうやったら泣けるの?泣いたことないからやり方を教えて。ぎんちゃん早く」
「お前…本気で言っているのか?赤子の頃はわんわん泣いていたというのに。…泣き方がわからないだと?」
今まで怒っていたことを忘れたかのように、若葉を背中から降ろした銀は、中腰になって俯く若葉の肩を揺すった。
「…今のは冗談だ。だが嫁に行く話はなかったことにしろ。もしお前が本気ならば、俺が雪男を殺すぞ」
「え!ぎんちゃん駄目。雪ちゃんはいっつもいっぱい遊んでくれるんだから。お嫁さんには行かないから…許してくれる?」
「それならいい。ああ驚いた…。お前を美しい女に育てて大切にしてくれる男に嫁ぐまで俺が見届けるんだ。まだ童子のくせにませたことを口にするんじゃない。次に同じようなことを言ったら家から追い出すからな」
「うん。ぎんちゃんごめんね」
2人が仲直りした様子を部屋からこっそり見守っていた息吹は、赤子の背中を叩いてげっぷを出してやりながら、山姫と顔を見合わせて笑った。
銀は若葉が離れて行くのを惜しんでいるし、若葉は鈍感そのもので銀を振り回す――そんな2人はやはりかつての自分と主さまのようで、見ている側の立場になってそれがとてもはらはらする光景であることに苦笑を抑えきれない。
「息吹、もう乳はやったんだろう?そろそろ娘を抱かせてくれ」
「あ、主さま。はいどうぞ。…若葉には人のお友達が必要だよね。今度幽玄町の寺子屋に連れて行ってあげてもいい?」
「ああ、いいが…銀が許すか?あいつ意外と独占欲が強いからな。……何故笑っている?」
「ううん、なんでも。ねえ主さま…大好き」
「!!な…、お、お前…いきなり何を言う!…山姫笑うな!あっちへ行ってろ!」
「はいはい。主さまは全然変わらないねえ」
山姫が笑いながら出て行くと、照れに照れた主さまは隣に移動してきた息吹の肩を抱き、小さな声で“生んでくれてありがとう”と囁いた。
何故機嫌が悪くなったのか全くわからない若葉は、おろおろしながらも手を伸ばして銀の耳を無理矢理起こすと、垂れたままの尻尾を気にしてしがみつく。
「ぎんちゃん…怒った?」
「…怒っているが、それがどうした」
「…どうして怒ったのかわかんない。私のせい?どうしたら許してくれるの?ぎんちゃんこっち向いて」
大きくため息をついた銀は肩越しに振り返り、唇を尖らせている若葉を濃紺の瞳で睨み、意地悪を言った。
「泣いて許しを請え。そうすれば許してやる」
「…泣く…?どうやったら泣けるの?泣いたことないからやり方を教えて。ぎんちゃん早く」
「お前…本気で言っているのか?赤子の頃はわんわん泣いていたというのに。…泣き方がわからないだと?」
今まで怒っていたことを忘れたかのように、若葉を背中から降ろした銀は、中腰になって俯く若葉の肩を揺すった。
「…今のは冗談だ。だが嫁に行く話はなかったことにしろ。もしお前が本気ならば、俺が雪男を殺すぞ」
「え!ぎんちゃん駄目。雪ちゃんはいっつもいっぱい遊んでくれるんだから。お嫁さんには行かないから…許してくれる?」
「それならいい。ああ驚いた…。お前を美しい女に育てて大切にしてくれる男に嫁ぐまで俺が見届けるんだ。まだ童子のくせにませたことを口にするんじゃない。次に同じようなことを言ったら家から追い出すからな」
「うん。ぎんちゃんごめんね」
2人が仲直りした様子を部屋からこっそり見守っていた息吹は、赤子の背中を叩いてげっぷを出してやりながら、山姫と顔を見合わせて笑った。
銀は若葉が離れて行くのを惜しんでいるし、若葉は鈍感そのもので銀を振り回す――そんな2人はやはりかつての自分と主さまのようで、見ている側の立場になってそれがとてもはらはらする光景であることに苦笑を抑えきれない。
「息吹、もう乳はやったんだろう?そろそろ娘を抱かせてくれ」
「あ、主さま。はいどうぞ。…若葉には人のお友達が必要だよね。今度幽玄町の寺子屋に連れて行ってあげてもいい?」
「ああ、いいが…銀が許すか?あいつ意外と独占欲が強いからな。……何故笑っている?」
「ううん、なんでも。ねえ主さま…大好き」
「!!な…、お、お前…いきなり何を言う!…山姫笑うな!あっちへ行ってろ!」
「はいはい。主さまは全然変わらないねえ」
山姫が笑いながら出て行くと、照れに照れた主さまは隣に移動してきた息吹の肩を抱き、小さな声で“生んでくれてありがとう”と囁いた。

