主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

それからというものの、若葉は赤子の傍から離れず、息吹と2人できゃっきゃと声を上げながら襁褓の交換をしてやったりして楽しそうにしていた。


「お乳をあげるから、主さまたちあっち行ってて。母様と若葉はここに居ていいからね」


「…別に俺が居たっていいだろう?見たことがないわけじゃなし…」


「!ちょ、主さまの助平!馬鹿!銀さん、主さまを連れてって!」


「ああ。ほら十六夜、駄々をこねるな。晴明、男3人で酒でも飲もう。準備をしてくれ」


やれやれと晴明が腰を上げて嫌がる主さまを引っ張って部屋から出て行くと、肩で息をついた息吹は浴衣の胸元をはだけさせて、赤子にお乳を含ませた。

勢いよくお乳を飲む赤子の頭をずっと撫でていた若葉は、隣の部屋でやんやと声を上げて酒を飲んでいる銀たちの声も聴こえていないのか赤子に夢中で、息吹は山姫と顔を見合わせて笑うと、若葉をからかう。


「若葉もあと10年位経って綺麗になったら、銀さんに振り向いてもらえるかもよ」


「ぎんちゃんが振り向く?どうして振り向くの?私が綺麗になったらぎんちゃんが喜ぶの?」


「うーん…うん、喜ぶと思うな。若葉は銀さんのことが好きなんでしょ?」


「うん、ぎんちゃんのこと好き。ぎんちゃんが“赤ちゃんが欲しい”って言ったら私が生んであげてもいいよ」


また山姫と顔を見合わせた息吹が声を上げて笑うと、若葉はむきになって立ち上がり、その場で地団太を踏んで唇を尖らせた。


「どうして笑うの?私だっていつかはお姉ちゃんみたいに可愛い赤ちゃん生んで幸せになるんだから」


「うん、笑ってごめんね若葉。私もね、16くらいの時に主さまと夫婦になったから、若葉を幸せにしてくれる人と早く出会えたらいいね」


「うんっ。雪ちゃんとかどうかな。雪ちゃんかっこいいし優しいから好き」


“好き”を連発する若葉はやはりまだ恋心を抱いたことがないがないらしく、内心ほっとした息吹は、雪男にこの話をして仰天する姿が思い浮かび、また笑い始めてしまった。


「雪ちゃんかあ。そだね、いい案かも。雪ちゃんに聴いてみたら?」


「ちょっとあんた、雪男はあんたに惚れてるんだから、余計なことしない方がいいよ」


山姫が諭したが、乗り気になってしまった若葉は、すぐさま隣の部屋に駆けて行ってしまう。

そして、銀の雷が落ちた。