「朧、俺たちは夫婦になったけど、俺は第一に主さまが大切だ。主さまが歩む道を少しでも平穏なものに。先代の頃からずっとそう思って、ずっとそうしてきた。だから…」
「分かってます。私はあなたの隣に居られればいいんです。…でも女の中では私が一番ですよね…?」
じわりと詰め寄られた雪男は、壁際にじりじり追い詰められながらかくかく頷いた。
「も、もももちろん!」
「ならいいんです。お師匠様…兄様がとっても寂しそうで胸が張り裂けそうでした。ねえお師匠様…兄様がお嫁さんを貰わないのなら、私たちの子が兄様の周りを騒がしくて寂しくならないようにしてあげたいな」
「んん、そうだな。そういや周様が姫を紹介するとかしないとか言ってなかったか?」
「そうでした?兄様ったら女の人と会ったとか会わないとか私には言わないから」
「いやあ、主さま意外とこそこそ色々やって…」
「俺がこそこそなんだって?」
気配を全く感じさせず背後に立っていた朔にぞっとした雪男はささっと正座して手をぶんぶん振った。
「いいや、そんな話してませんけど!」
「ふん、俺に憎まれ口叩くのはお前と輝夜くらいなものだ」
「ま、今に憎まれ口叩くのが沢山増えるから安心しろよ」
雪男と朧が顔を見合わせて笑い、朔もまた笑う。
「楽しみにしてるよ」
――そしてそれからそんなに遠くない未来の話――
「主さまー!そっちに小さいの行ってないか!?」
「ああ、今俺の膝の上に居る」
「こらー!主さまに迷惑かけるなっつったろ!」
雪男が朔の膝の上でごろごろしている子の首根っこを掴むとぶらんとぶら下げて謝った。
「ごめん、これから百鬼夜行だってのに」
「いいや、構わない。また後でな」
「うん!」
「よし、じゃあ行こうか。…ほら、お前また胸元が緩んでるぞ。いい加減しゃんとしろ」
「ええ兄さん。私はどうにもだらしないのが治らないんですよねえ」
庭に出た朔は、縁側に座って見上げてくる女に笑顔を向けた。
「じゃあ行ってくる」
「気を付けて。あと甘いものが食べたい」
「はいはい、何か見繕ってくるよ」
雪男と成長して少女から美女へと変貌した朧が朔たちに手を振る。
「お気をつけて!」
「お前たち!行くぞ!」
「おう!」
雪男は朔たちを見送って朧の肩を抱いて笑った。
「主さまに子ができるのも遠くないな。ふふ…厳しく躾けてやるぜ」
「嘘つかないでください。私たちの子に甘々じゃないですか」
「いいの!自分の子はいいんですー」
――今日も百鬼夜行が空を行く。
雪男と朧はその軌跡…そして自分たちの軌跡を、いつまでも見つめ続けた。
【完】
「分かってます。私はあなたの隣に居られればいいんです。…でも女の中では私が一番ですよね…?」
じわりと詰め寄られた雪男は、壁際にじりじり追い詰められながらかくかく頷いた。
「も、もももちろん!」
「ならいいんです。お師匠様…兄様がとっても寂しそうで胸が張り裂けそうでした。ねえお師匠様…兄様がお嫁さんを貰わないのなら、私たちの子が兄様の周りを騒がしくて寂しくならないようにしてあげたいな」
「んん、そうだな。そういや周様が姫を紹介するとかしないとか言ってなかったか?」
「そうでした?兄様ったら女の人と会ったとか会わないとか私には言わないから」
「いやあ、主さま意外とこそこそ色々やって…」
「俺がこそこそなんだって?」
気配を全く感じさせず背後に立っていた朔にぞっとした雪男はささっと正座して手をぶんぶん振った。
「いいや、そんな話してませんけど!」
「ふん、俺に憎まれ口叩くのはお前と輝夜くらいなものだ」
「ま、今に憎まれ口叩くのが沢山増えるから安心しろよ」
雪男と朧が顔を見合わせて笑い、朔もまた笑う。
「楽しみにしてるよ」
――そしてそれからそんなに遠くない未来の話――
「主さまー!そっちに小さいの行ってないか!?」
「ああ、今俺の膝の上に居る」
「こらー!主さまに迷惑かけるなっつったろ!」
雪男が朔の膝の上でごろごろしている子の首根っこを掴むとぶらんとぶら下げて謝った。
「ごめん、これから百鬼夜行だってのに」
「いいや、構わない。また後でな」
「うん!」
「よし、じゃあ行こうか。…ほら、お前また胸元が緩んでるぞ。いい加減しゃんとしろ」
「ええ兄さん。私はどうにもだらしないのが治らないんですよねえ」
庭に出た朔は、縁側に座って見上げてくる女に笑顔を向けた。
「じゃあ行ってくる」
「気を付けて。あと甘いものが食べたい」
「はいはい、何か見繕ってくるよ」
雪男と成長して少女から美女へと変貌した朧が朔たちに手を振る。
「お気をつけて!」
「お前たち!行くぞ!」
「おう!」
雪男は朔たちを見送って朧の肩を抱いて笑った。
「主さまに子ができるのも遠くないな。ふふ…厳しく躾けてやるぜ」
「嘘つかないでください。私たちの子に甘々じゃないですか」
「いいの!自分の子はいいんですー」
――今日も百鬼夜行が空を行く。
雪男と朧はその軌跡…そして自分たちの軌跡を、いつまでも見つめ続けた。
【完】

