主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「この度は粋な計らいをありがとうございました」


――そこはどこでもない世界。

見たこともない花が咲き乱れる花畑の中、恐ろしく容姿の整った面々がひとりの男を中心に輪になって座っていた


輝夜はその男に頭を下げ、その男は自らが眩い光を放ち、視界が奪われる。

輝夜自身もこうして対面したことは数えるほどしかない。


「妹は救えたようだね」


「はい。妹を優先して頂き、重ね重ねお礼を申し上げます」


周囲の者たちがさざめきのような笑い声を上げる。

この輪に加わることすらおこがましいことだったが、そのうちのひとり――金の髪に碧い瞳の男が腕を組みながら輝夜の顔を覗き込むような仕草をした。


「?何でしょうか?」


「いや、鬼灯がいい色になった。そろそろだな」


「輝夜」


輪の中心に居る男は目を伏せてふっと笑った。


「そろそろ近い。お前は文句のひとつも言わずよくやっている。感謝しているよ」


「私こそあなたに命を救って頂き、望んだ母の腹から…そして兄弟たちを得ることができました。これ以上の喜びはありません」


「真面目すぎるのよね、輝夜は」


「そうだぞ、時には力抜いて気楽にやれよ」


それぞれが好き勝手なことを言って輝夜を困らせていると、輪の中心に居る男は輝夜を招き寄せて前に座らせると、その手を両手で包み込んだ。


「お前の役目もそろそろ終わる。最後にはお前の望む者を救えるようにしてやろう。どうしたい?」


「いい…のですか?」


「その鬼灯はお前が人々を救う毎に熟す。そしてもう完熟が近い。私はね、お前の命を救って彼らと同じ役目を与えて、それを本当に果たすことができるのかずっと見ていた。お前が妹を救う様、そして兄を慕う様もね」


「兄さん…ですか。そうですね…別れは少しつらかったかな」


「選ぶといい。私がそうしてあげよう」


「兄さんに苦難の道を歩いてほしくはないんですが…兄さんがもし危機に陥った時は救いに行きたいですね」


そうしてあげましょうよ、と声が上がり、輝夜を救ったとするその眩き者は、ひとつに束ねた長い金の髪を風にそよがせながら頷いた。


「そこで成就としよう。そこから先はお前の進みたい道を歩むといい」


「ありがとうございます」


そこはどこでもない世界。

輝夜は集う皆にあたたかな声をかけられて、微笑みながら目を閉じた。