主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

その日の夜ーー

朔は百鬼が集まる前に、雪男と朧を自室に招き入れて居住まいを正した。

主の朔がそうするのだから、こちらもしなければならない。

雪男と朧もしゃんと背を伸ばして朔が話し出すのを待った。


「改めて言うほどのことじゃないが、一応確認しておく」


「おう」


「はい」


「うちの家業は人に災いをもたらし、死に至らしめる妖を粛清することだ。人と妖の間に立ち、何物も奪わず犯さず食わず、この思想を同じくする者だけが百鬼として共に俺たち一族と空を行く。今もそれに相違ないな?」


雪男は元々人に対して興味があり、殺したことも食ったこともなく、その思想はすんなり受け入れた。

また朧も生まれてこの方人を目の敵にしたことはなく本人もまた半分が人。

改めて問われると朔の真意が分からず戸惑い、朔はふっと笑って手を伸ばして朧の頭を撫でた。


「朧には百鬼にする契約は結ばないから一応と思ってね。明日から空を飛ぶ訓練をするから気を引き締めるんだよ」


「はいっ」


「恐らく父様が心配して頻繁に来るかもしれないが、まあ揉まれろ」


「なんだよ揉まれろって。いじめられろって意味か!」


ぷいっと顔を晒した朔が笑っているのが見えて、少し安心した雪男は頰をかいて身を乗り出した。


「建ててくれてるあの家なんだけどさ、悪いんだけど子ができるまでこっちにいるよ。どうにも主さま心配だし、それに地下の件があるからさ」


「ん、分かった」


ーー地下の件。
朧はまだそれを知らず、雪男が留守役としてずっとこの屋敷に居る大半の理由がそこにある。


「地下?」


「それもまた今度教えるから。さあ、準備しよう。お前たちは今夜はここに残ってくれ」


「了解」


朔の部屋を出ると辺りをうろついていた銀と焔がこちらに気付いて寄ってきた。


「朔、うちの息子のことだが…」


「方向音痴を治したら正式に契約してやってもいい。それまでは見習いだ」


焔の顔がぱっと華やぐ。
尻尾は喜びにはち切れんばかりにぶんぶん振られていて朧たちが笑った。


また仲間が増える。

きっとこれからも、ずっと。