主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

初夜とはつまり夫婦になってはじめての共同作業。



……だがその共同作業は夫婦になる前にすでに行ってしまったので、ふたりで話し合って今夜は何もせず手を握り合って朝まで過ごそうという結論に至った。


求めていたものはすべて手に入れたし、これ以上望むものもない。

…強いて言えばそれは子のことだったが、それは欲してもすぐ手に入るものではないので、閉じ込められた部屋にふたり――朔が部屋の前に置いて行った梨をくるくる回しながら短刀で皮を削りながら笑った。


「主さまがさ、丘の上にすげえ広い家を作ってる理由が俺たちにたくさん子を作れって言うんだ。それよか自分の嫁を探せっつーの」


「でも輝夜兄様が素敵な方と巡り合えるって…」


「それあんま信じてないみたいだぜ。あの人は実力主義だから、本当に欲しいと思ったら自分で見つけてすぐ手に入れるんじゃないかな。…それ側近としては立場ないんだけど」


――皮を剥いた梨を朧の口に突っ込み、自らは酒を口に運んだ雪男は、朔と契約を交わした時のことを思い出した。


「大体の百鬼は先代の時代から残ってる奴らが多くて再契約してる。だけどお前は百鬼としてじゃなくて参加することになる。空が飛べるようになるのって簡単じゃないぜ。できるか?」


「大丈夫ですよ、私これでも優秀だって父様に言われたんだから」


「ははっ、先代そう言ったの後悔してるだろなー」


…なぜか敷かれた床の枕元には男用の白い浴衣が置いてあったので、抜かりない準備にまた笑った雪男はそれに着替えて朧の手を引いてふたりで床に寝転んだ。


「さっきの話だけど…主さまもその弟妹たちも半妖だけどみんなまだ死んでない。だからお前も長く生きる。逝ったとか逝かないとかそういう話はしないでほしい。…考えるだけど胸が痛くなるんだ」


胸を押さえて少し苦し気な表情を見せた雪男の身体にぴったりくっついて腕枕をしてもらった朧はこくんと頷いて目を伏せた。


「もうしません。氷雨…ぎゅってして」


真名を呼ばれてぞくっとした雪男は望むままに朧を抱きしめて同じように目を伏せる。


「ちゃんと言ってなかったけど…朧…お前を愛してる」


「ええ…私も氷雨…あなたを愛してます」


それ以上の言葉はいらなかった。

ふたりは夜が明けるまでそうして互いの存在を確かめ合った。