主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

祝言の日は、深夜になろうという時間になっても宴が終わる様子はなかった。

雪男自身は朝まで続くだろうと予想していたため文句も言わず付き合っていたが、息吹は人のため夜にはちゃんと眠たくなって、ちゃんと寝なければいけない。


「俺たちは失礼する。朔、後は頼んだぞ」


「はい。道中お気をつけて」


「父様、母様、今日はありがとうございました」


朧が頭を下げると、息吹は一度朧をぎゅうっと抱きしめて手を振って屋敷を後にする。

見送りに出ていた雪男は、隣に立っている輝夜が何やら妙な顔をしていることに気付いて声をかけた。


「輝夜?どうした?なんか変な顔してるぞ」


「え?ああ…いえ、ちょっと失礼してもいいでしょうか」


輝夜がここを去らなければならないと口にしてから、朔はなるべく輝夜から目を離さないようにしていた。

寝る時も一緒だったし、輝夜の要望通り風呂にも一緒に入ったこともある。

輝夜がこうして自ら離れていこうとするのを厭う朔は、ついて行っていることを隠さず輝夜の後ろを歩いて、屋敷の角部屋にあたる客間に入っていく輝夜に声をかけた。


「俺も行っていいか?」


「ああ…ええ、どうぞ」


部屋に入って襖を閉めると、輝夜はおもむろに口に手をあてて鬼灯を取り出した。

――そして朔はその鬼灯の色に驚いて、思わず手が伸びた。


「輝夜、お前…」


「朧が正しい道にたどり着いたことで、今回の私の役目は無事終えました。…実は途中ずるをしてしまったので色がひと際薄くなったのですが…これはおまけしてくれたのかな」


強い光を放って鳴動する鬼灯。

輝夜がこの鬼灯と共に生きて、この鬼灯が赤く熟した時に欠けているものがその身に戻ってくる――


「私が朧を救ったつもりが、どうやら私が朧に救われたのかもしれないなあ」


「共に救い、救われたということだな。輝夜、お前は本当によくやった。数多の声が届く中よく駆けつけてくれた」


幼い頃朔がよくしてくれたように頭を撫でられた輝夜は、少し照れながらふっと笑った。


「できればこの実が赤く熟す時は、兄さんの声を聞いて、兄さんを救いたいな」


「お前それはつまり俺に危機に陥ろと言いたいのか?」


互いにははっと笑って鬼灯を覗き込む。


輝夜が救われる日も、また近い。