主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

晴明の祝詞が始まり、雪男と朧がその前に立ち、一応流れは聞いていたものの、ちんぷんかんぷんでほぼ聞くだけに徹していた。

だが朧はちゃんと学習していたらしく、祝詞を聞きながら頷いたりもしていたので、気を引き締めて晴明を見つめる。


ーー後方からの視線が痛い。

一部舐めるように見ている者が居たが、そこは無視。


おごそかな時間だと思った。

この形式ばった儀式を経て真の夫婦となることが今でも不思議に思われて、隣の朧を盗み見してはその美しさに見惚れていた。


…息吹にはとても似ていない。

最初は似ていると思っていたが、最近は小憎たらしいほどに十六夜に似ていて、見せる表情に驚くことがある。

きれいに化粧をしていると本当にため息がもれるほど美しく、見つめているとその視線に気付いて朧がこちらを見た。


「お師匠様?」


「あ、ごめん、穴が開くとこだった」


「もうっちゃんとして下さい」


「これ、私語は慎みなさい。といってももう終わるよ」


晴明が笑うと、誓詞奏上の運びとなり、夫婦になる誓いを互いに立てた。

朧はすらすらと呼んだが雪男は何度もつまづき、輝夜たちが野次を飛ばして囃し立てる。


静粛にと最初は十六夜も注意していたが、こんなことが起きるのもふたりを祝してのこと。


「晴明、もうその辺でいい。俺たちはふたりを夫婦と認めた。後は好きにやろう」


わあっと歓声が沸き、雪男と氷雨は緊張から解放されてふたり手を取り合って笑った。


「なあ、こんなんでいいのか?」


「いいんじゃないですか?お師匠様、これで私たち夫婦に…」


「いや、違うな。まだ夫婦じゃない」


「え?」


「雪男、飲むぞ。こっちに来い」


朔に呼ばれて髪を崩した雪男がその場を去ると、朧はその意味を考えてぼんやり。


「どういう意味…?」


それは、夜に分かった。