太鼓や笛が鳴り響く中、待っていた雪男の前で行列が止まった。
十六夜がそっと手を離すと朧が顔を上げ、白粉でいつも以上に白くなった朧は、赤い紅を引いた唇をふっと和らげた。
「お師匠様…素敵…」
「あ…いや…あー…その…」
「きれいだよ、朧」
「!」
晴明に褒め言葉を奪われて口をぱくぱくさせていると十六夜が射抜くような眼差しで睨んできたため、雪男は朧に手を差し出して柔らかい手を取った。
「お師匠様、私緊張して口の中がぱさぱさ…」
「あ、俺さっき胃痛で転げ回ってた…」
朔が吹き出し、大役を終えた一族が続々と門を潜って屋敷へと入って行く。
「雪ちゃん、まだ終わってないんだからね?」
「お、おう。朧」
手を引いて中へ入り、朧とふたりで歓声を上げる人々に一度手を振って背を向けると、正面にぎらつく目をした如月が立っていた。
「髪を上げているのか。可愛いよ、愛玩してやりたいが今日はやめておこう」
「今日だけじゃなくてずっとやめろ!」
皆が礼装していて、それぞれがかなりの逸話を持っている朔の弟妹は、育ての親とも言える雪男を温かな目で見守って大広間を指した。
「私たちもああして祝言を挙げた。あなたの祝言をこの目で見ることができて本当に嬉しいのよ」
朔だけでなく母に恋して苦しんでいた雪男の祝言をこの目で見ることができるなんてーー
涙ぐむ者も出てきて雪男が焦っていると、朧がい小さく咳払いをした。
「お師匠様、私に集中して下さい」
「ん、ごめん。…なんかすげえ久しぶりな気がするな。あっちでゆっくりできたか?」
「はい、父様と母様と姉様で親子水入らずの時を過ごしました。お師匠様は?」
「んー、俺は主に酒ばっか飲んでた気がする…。で、主さまに怒られてばっかだったな」
「ふふっ、兄様たちのせいですね。あ、着きましたよ」
話しながら移動しているうちにふたりの緊張もすっかり解けて、先に大広間に待機していた晴明がふたりを見て微笑んだ。
「ああ、いい顔をしている。さあ始めようか」
一族が後方に控え、朧と雪男が晴明の前に座した。
今から夫婦になるーー待ち望んだ瞬間がやって来る。
十六夜がそっと手を離すと朧が顔を上げ、白粉でいつも以上に白くなった朧は、赤い紅を引いた唇をふっと和らげた。
「お師匠様…素敵…」
「あ…いや…あー…その…」
「きれいだよ、朧」
「!」
晴明に褒め言葉を奪われて口をぱくぱくさせていると十六夜が射抜くような眼差しで睨んできたため、雪男は朧に手を差し出して柔らかい手を取った。
「お師匠様、私緊張して口の中がぱさぱさ…」
「あ、俺さっき胃痛で転げ回ってた…」
朔が吹き出し、大役を終えた一族が続々と門を潜って屋敷へと入って行く。
「雪ちゃん、まだ終わってないんだからね?」
「お、おう。朧」
手を引いて中へ入り、朧とふたりで歓声を上げる人々に一度手を振って背を向けると、正面にぎらつく目をした如月が立っていた。
「髪を上げているのか。可愛いよ、愛玩してやりたいが今日はやめておこう」
「今日だけじゃなくてずっとやめろ!」
皆が礼装していて、それぞれがかなりの逸話を持っている朔の弟妹は、育ての親とも言える雪男を温かな目で見守って大広間を指した。
「私たちもああして祝言を挙げた。あなたの祝言をこの目で見ることができて本当に嬉しいのよ」
朔だけでなく母に恋して苦しんでいた雪男の祝言をこの目で見ることができるなんてーー
涙ぐむ者も出てきて雪男が焦っていると、朧がい小さく咳払いをした。
「お師匠様、私に集中して下さい」
「ん、ごめん。…なんかすげえ久しぶりな気がするな。あっちでゆっくりできたか?」
「はい、父様と母様と姉様で親子水入らずの時を過ごしました。お師匠様は?」
「んー、俺は主に酒ばっか飲んでた気がする…。で、主さまに怒られてばっかだったな」
「ふふっ、兄様たちのせいですね。あ、着きましたよ」
話しながら移動しているうちにふたりの緊張もすっかり解けて、先に大広間に待機していた晴明がふたりを見て微笑んだ。
「ああ、いい顔をしている。さあ始めようか」
一族が後方に控え、朧と雪男が晴明の前に座した。
今から夫婦になるーー待ち望んだ瞬間がやって来る。

