主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

神前式となったわけだが、元々妖は神仏を敬ったりはしない。

だが晴明の信じるものは無条件に信じている。

大広間に作られた神棚や祭壇を見て居心地が悪かったがーーそれよりも、緊張しすぎて気分が悪くなっていた。


「晴明、俺倒れそう」


「倒れても良いが、我らと朧が末代までそなたを祟ってやるぞ」


「!が…頑張ります…」


「簡易的なものにする故ゆるりとしていろ。…ふふ…そなたが縁者か。…ふふ…」


ーー何故かよくこういった反応をされがちな雪男は、いつもは垂らしている前髪を今回だけはきちんと顔が見えるように後ろに流していて、慣れずについ触ろうとしては手を引っ込めていた。


「袴とか着る予定じゃなかった…」


「十六夜の家系は鬼族の祖なのだ。その直系の者が口約束で夫婦になるなど言語道断。いい加減腹を括れ」


屋敷の前にも多くの幽玄町に住む者たちが詰めかけていた。

そして遠くから徐々に歓声が近づいてくる。

到着が、近い。


「氷雨、あなたとても素敵よ」


「母さん…来てくれてありがとう。俺、ちゃんとやれるかな」


「案ずるな。そなたはじっとしていれば良い」


神官衣に身を包んだ晴明が笑うと、部屋に白兎が飛び込んで来た。


「き、来ました!主さま素敵!」


「これ、主役が違うぞ。雪男、迎えに行こう」


晴明に促されて冷や汗を拭った雪男が大きな門戸に向かう。

門戸の近くにいた者たちが雪男の姿を見てまた一際大きな歓声を上げた。


「ふむ、そなたは人徳がある故人気があるな。十六夜の時とはまた違う」


「ははっ、あの時もすごかったぞ。……あ…」


ーーまだ遠くだったが、正面の道から花嫁行列が近づいてきていた。


真ん中には綿帽子を被って俯きながら歩いている朧と、その手を取って神妙な顔をしている十六夜。

息吹はすでに泣き出しそうな顔をしていて、傍に居た朔がこちらに気付いて軽く手を上げた。


「やべえ…緊張で吐きそう…」


「末代まで…」


吐き気が止まった。