主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

沿道には幽玄町に住む者全員が居るのではという混み具合で人々がひしめき合って待っていた。


ーーもしかしたら一生見ることができないかもしれない光景…


妖を統べる主の朔、そして多くの兄弟たちが花嫁行列を彩り、特にほとんど町を出歩くことのない朔が礼装なことーー

さらに先代の十六夜と妻の息吹がこれから嫁いで行く朧に付き添い、目が潰れるほどに豪華な光景は眼福以上の代物で、失神する者も続出するほどだった。


「朧……」


ようやく自室から出てきた十六夜は朧の白無垢姿に目を細め、歓声に沸く沿道にちらりと視線をやった後、近寄ろうと詰め掛けてくる百鬼たちにぴしゃり。


「沸き立つな。それと人を食い物を見るような目で見るな。いいか」


一斉に返事をした百鬼と朔の兄弟たちに朔が吹き出し、恥ずかしさにずっと俯いている朧の手を取った。


「父様、道中朧をよろしくお願いします」


「…ああ」


朔が手を離し、その手を十六夜が取る。

…まだ小さくて、まだまだ童だと思っていた娘が嫁ぐーー

嫁ぎ先には異論がありまくるがもう背に腹はかえられない。


「…行こう」


「はい」


おごそかに行列の行進が始まった。

朧の周りを朔たちが固め、そらにその周囲を見目の良い百鬼たちが固める。

人々は目的の朔や朧や兄弟たちを見ることができないでいたが、この花嫁行列に参加できたことを末代まで自慢できると喜んだ。


「兄さんが妻を迎える時はもっとすごいんでしょうか」


「どうだろうな、仰々しいのは好きじゃないが…祝ってもらえるのは嬉しいだろうな」


しずしずと歩く朧はとても貞淑で美しかったが、実は本人は気が気ではなく、何度も転びそうになっては十六夜に強く手を引かれてなんとか持ち堪える。


「ありがとう、父様」


「ああ。………きれいだぞ」


なかなか褒めたりはしてくれない父の言葉に目が潤み、さらに足元が見えなくなって笑われた。