主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

祝言当日ーー

おごそかな空気が流れる中、化粧をして髪を結って白無垢姿になった朧はどこからどう見ても立派なひとりの女だった。


この日は朝から百鬼たちが屋敷の前で列を成し、生家から雪男達のいる屋敷まで花嫁行列をすることになり、朔や輝夜、銀や焔、山姫と白雷までも駆り出され、変貌した朧の姿に皆がため息をついた。


「これは…美しいな。朧、きれいだよ」


「兄様、ありがとうございます。お師匠様はおひとりなんですか?」


「いや、手練れを何人か置いてきてるけど皆がこっちに来たがって大変だったよ」


ーー朧の傍には息吹が居たが、十六夜の姿がない。

朔と輝夜がきょろきょろしていると、息吹は笑みを噛み殺してひそりと囁いた。


「もうちょっとひとりにさせてあげて」


「何人送り出してもやはりこの日はそうなるものなのですね」


「そうだよ、我が子が手元から居なくなるんだもの。私だって寂しい」


朧の白い手をぎゅっと握った息吹の目には涙が溜まり、危うくもらい泣きしそうになった朧が唇を噛み締めて耐えながら微笑んだ。


「近くに住んでるんだから行き来してもいい?」


「そうだね、いつでもおいで。雪ちゃんと喧嘩した時とかね」


「雪男はすでに尻に敷かれてますから大丈夫ですよ」


皆が笑い声を上げた時、一応今日だけはと礼装姿な潭月と周がやって来て朧を見るなり口をへの字に曲げた。


「けしからんな、たいそう美しいじゃないか。嫁に出すのはまだ早い。今すぐ雪男を殺しに行こう」


「やめんかこのたわけが。朧、そなた妾の娘時代の時にそっくりじゃ。よう大きゅうなった」


「お祖父様、お祖母様、ありがとうございます。私…お師匠様にきれいだって言ってもらえるかな…」


「もし言わなかったら殺…」


「妾が絞め殺してくれようぞ」


過激な祖父母の発言にまた笑い声が上がる。


ーーその頃雪男は…


袴姿の礼装に身を包みながら、吐き気を催しそうなほどに緊張していた。


「緊張で死にそう…!」


朧の白無垢姿を想像するほど余裕がなく、すでにぐったり。