主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

祝言の準備は慌ただしく、幽玄町に住む者たちから祝物もたくさん届くため、本当にあれから朧と会うことができなくなった雪男は文を書いて朧に送った。


またその文を受け取った朧は直ぐさま自室に篭ると胸を高鳴らせながら文に目を通す。


『こちらは部屋が満室で騒々しくて敵わない。でもそれももうすぐ終わる。会えなくて寂しい。お前の花嫁姿を楽しみにしている』


ーー達筆だが見やすい字で書かれた文を胸に抱きしめて寝転んで悶えていると、息吹がひょこっと顔を出して手招きした。


「朧ちゃん、祝言までもう日がないから最後に合わせてみてもらえる?」


「はい」


風通しの良い部屋へ移動すると、そこには白無垢が飾られていて、まだ一度も袖を通してなかった朧は新調された白無垢を座って見上げながら吐息をついた。


「きれい…」


「私のは朧ちゃんには小さすぎるから新調したけど気に入ってもらえた?」


「うん、とっても。母様、今着なくていいの?」


「祝言の当日でいいよ。今着ちゃうと父様が泣いちゃうかもしれないから」


明後日に祝言を挙げる。

恋しさは募っていたが、いつかは旅立ってしまう父母との時間を大切にしたいと思い、忍んで会いに行くこともしなかった。

姉の如月からは家業のいろはをいちから教えてもらい、いつかは雪男が百鬼を抜けて一緒にゆったりとした時間を過ごしながら家業を手伝う日々を夢見て教えを請うた。


「雪ちゃんの袴姿もきっと凛々しくてかっこいいだろうねっ」


「…!そうだった…お師匠様も正装…!」


想像するとあまりに美しすぎて卒倒しそうになった朧は、両手で顔を覆いながら赤くなる顔を隠した。


「な、なんか…鼻血出そう…」


「こほん…朧ちゃん…ついでだから聞かせてもらうけど……雪ちゃんって…どうだった…!?」


「!や、やだ母様ったら!…でも教えちゃう!」


ごにょごにょ。

こそこそ話しをしているふたりを見かけた十六夜は、手を握り合いつつ奇声を上げているふたりを見て見ぬ振りをして、そっとその場を離れた。