主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

周の思うがままに膝を撫で回されて潭月の不気味な笑みに変な汗が止まらなくなった雪男は、朔に懇願して共に百鬼夜行に出て行った。


それを見送った後、潭月と周は牛車に乗って息子の十六夜の屋敷を訪れたのだがーー

軒先で待ち構えていた十六夜がわなわな震えていて、つい興奮して両腕を広げた。


「俺の愛しい息子よ会いたかったぞ。さあこの胸に飛び込んでこい」


「寝言も大概にしろ。来るのは祝言当日でいいと文に書いたはずだが」


「ぽろぽろ子が出来た後数十年も経って生まれた末の孫娘が嫁に行くんだぞ。飛んで帰って来てやった」


舌打ちした十六夜を諌めるように息吹が袖を引き、朧は祖父母に駆け寄ってふたりの手を握った。


「来て下さってありがとうございます!」


「朧よ、あの雪男を落とすとはさすが俺の孫娘だ。ああ大きくなったな…それに俺の愛しい息子によく似てきた」


「そうなんです。小さな頃は母様に似てたんですけど最近よく父さま似って言われます」


客間に通されると、相変わらずいらいらしている十六夜に周がぴしゃり。


「十六夜…妾に会えて嬉しゅうないのか。育て方を間違えたかの」


「ち、違います。…失礼いたしました」


「雪男も一段と良い男になっておった。朧、そなたの献身の賜物じゃの」


朧が照れていると、また渋い顔をしている十六夜についまたうずうずした潭月は、茶を口に運びながらちらりと見遣った。


「よく許したな」


「…許すも何ももう手を出された。責任を取ってもらう他ないだろうが」


「おおっすでにお手付きときたか、やるな雪男!だがなあ十六夜、お前は認めんだろうがお前は雪男を高く評価していた。あの屋敷の守りを任せるほどにな。身内にして損はない」


「……」


「そうなんです!十六夜さん、実は雪ちゃんのこと大好きなんだから」


息吹の横槍に十六夜の耳がみるみる赤くなる。


潭月と周は十六夜をからかいたくてたまらなくて、朧を膝に乗せて昔話に花を咲かせた。