主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「これもこれも、朧ちゃんにあげる」


息吹が使っていた化粧台や裁縫道具や櫛、着物などーー

息吹は押し入れや棚からありとあらゆる私物を取り出して並べて見せた。


大切に扱っていたためどれもこれも新品に近く、朧はその前に正座してひとつひとつ手に取って顔を輝かせていた。


「母様…いいの?」


「うん、いいよ。気に入ったもの全部持って行ってね」


「でも…」


「後は朔ちゃんと輝ちゃんだけだし、輝ちゃんはともかく朔ちゃんがお嫁を貰ったら、私たちは旅に出るから必要ないの」


ーーいつの頃からか、代を譲ると先代は同じ場所に留まらず旅をするようになっていた。

十六夜の父である潭月もまた然りで、妻の周と共に根無し草の旅をしては時々ひょっこり現れる。

現当主と先代が同じ場所に居ることは異例で、いつかはふたりで旅をと話をすることが多くなっていた。


「居なくなっちゃうの…?」


朧が心淋しげに呟くと、息吹は娘の真っ直ぐでさらさらな長い髪を櫛で梳いてやりながらやんわり頷いた。


「ここにずっと居ると主さ…父様が朔ちゃんに口出ししたくなるかもしれないって言ってたし。朔ちゃんがお嫁さんを貰うまでは居るからね」


「輝夜兄様が言うにはとても素敵な方と巡り合うって言ってた」


「そうなの?わあ、楽しみだねっ、怖い姑になって怖がらせようかな」


母の外見からそれはもても難しいことに思えたが、朧はひとつひとつ道具を検分して想いを馳せる。


雪男と新たな家族を作るーー生まれてくる子は百鬼として朔の元で戦うかもしれない…

その時は代が変わっているかもしれないが、雪男との子は一体どんな姿で生まれてくるだろうか。


「母様、私とお師匠様の子はどっちに似ると思う?」


「そうだね、雪ちゃんに似たらかっこいいし、朧ちゃんに似たら可愛いし、どっちに似てもかっこ可愛いんじゃない?」


それを縁側から聞いていた如月が吹き出し、笑いに包まれる。


「そういえば父様方のお祖父様とお祖母様もそろそろ来るから楽しみだね」


潭月と周ーーあらゆる意味で過激なふたりに会ったことはほとんどなかったが、父と話している様子はかなり面白かった記憶があり、かなり楽しみにしつつ到着を心待ちにした。